幻影師アイゼンハイム ★★★☆

THE ILLUSIONIST
2006 ヴィスタサイズ 109分
DVD

幻影師 アイゼンハイム [DVD]
■19世紀末のウィーンで、幻影師アイゼンハイムとして有名になったマジシャンは、幼い日に引き離された貴族の令嬢が皇太子のフィアンセとなっており、何かと素行の悪い噂がある皇太子との結婚を望んでいないことを知る・・・
エドワード・ノートン演じるアイゼンハイムは、意外にも控えめな演技で、あまりオーバーアクトになっていない点が好感が持てるが、むしろ映画の実質主役は皇太子に使役される警部で、これをポール・ジアマッティが演じるのだが、実に上手い。警部の人間味とアイゼンハイムの幻想的な存在感の対比がよく効いているし、本当はもっと熱く演じたいはずの技巧派のエドワード・ノートンを監督はよく抑制している。
■また、科学的合理主義者で、父王の追放を画策する野心家の皇太子をルーファス・シーウェルが演じて、これも圧倒的な存在感を示す。何しろ顔立ちだけでスクリーンを圧倒する。ひねりの効いた脚本もよく出来ているのだが、役者たちの分を心得た演技合戦が見所だ。
■脚本と監督を担当したニール・バーガーという才能に注目しよう。撮影監督はディック・ポープで、ゴールデンアンバー調の絵画的な画作りで幻想的な世紀末の情景を盛り立てる。音楽がフィリップ・グラスで、これもまた最近の没個性な映画音楽界にあって異色を放つ名スコアを聞かせてくれる。キャストもスタッフも何気なく豪華な良作である。

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