那須博之監督を悼む

 今更ですが、那須博之監督の急逝はショックでした。

 遺作の「デビルマン」は未見ですが、メイキング本の写真などを見るだけでも尋常な様子ではなく、心身の不調を懸念していたのですが、まさかの急逝でした。

 なんといっても個人的に人生の辛い一時期を「ビー・バップ・ハイスクール」や「新宿純愛物語」といった豪快なアクション映画で救ってくれた監督です。

 「地獄堂霊界通信」だってちゃんと映画館で観たし、世評とは裏腹に、本田博太郎の怪演や、怪奇もSFXも置いてけぼりでやっぱり力任せの対決にもつれ込むラストにも那須博之の駄目さ加減が微笑ましくてちょっと感動してしまったものです。

 「デビルマン」はそれにも勝る酷評を浴びたわけですが、少なくとも「ビー・バップ」シリーズの何本かはデジタル映像技術の発達する前の役者が肉体を酷使することが誇りであった頃のアクション映画の魂を熱っぽくフィルムに焼き付けた傑作であったはずです。

 確かに「デビルマン」に那須監督を起用した東映重役のセンスは壊滅的ですが、この映画1本しか見ていない若者や見てもいない者にまで貶される筋合いはなかったはずです。

 全盛期のジェームス・キャメロンジャッキー・チェンを仮想敵として低予算で孤軍奮闘した那須博之なら「香港国際警察」を観て何を思っただろうか、ふとそんな疑問が脳裏をよぎるのでした。

 さようなら那須監督。あなたの映画は確実に私の人生の一部分でした。

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