単なる昔話じゃないよ!日本の敗戦体験をモチーフとした、意外にもテーマ性の強い、骨太なドラマだった『日本誕生』

基本情報

日本誕生 ★★★☆
1959 スコープサイズ 182分 @アマプラ
脚本:八住利雄菊島隆三 撮影:山田一夫 照明:小島正七 美術監督:伊藤熹朔 美術:植田寛 音楽:伊福部昭 特技監督円谷英二 監督:稲垣浩

感想

■日本が、飛鳥時代どころか更に前の、古墳時代だった、記録も定かでない大昔。小碓命三船敏郎)は天皇中村鴈治郎)の側近大伴氏(東野英治郎)から疎まれ、熊襲征伐を命じられて、征伐した熊襲の弟(鶴田浩二)から日本武尊の名を受けるが、帰国するとすぐに今度は東国の蛮族征討を命じられる。父の本意はどここにあるのか?

■その過程の中で、日本武尊は、伊勢神宮の巫女・弟橘(司葉子)ととも美夜受姫(香川京子)とも夫婦の関係を築くので、三角関係になる。ドラマは日本武尊の受難の悲劇を描くのだけど、メロドラマとしてもかなり重層的に構築されていて、意外に見応えがある。ということに今回やっと気づいた。オールナイトでは真っ赤でボロボロのプリントだからね。ドラマとしての真価がわからない。とはいえ、別に重婚は罪ではない時代なので、悠長なものだけど。

東宝特撮としても発展途上で、特に合成カットが厳しくて、ブルーバック合成が頑張っているけど精度が荒くて、非常に勿体ないことになっている。編集ももう少し詰めるべきだし、多分編集をやり直すだけで、何割か完成度が上がると思う。基本的に、稲垣浩の戦後の「牧歌」路線に属するもので、なにしろ人間世界と高天原の神の世界を並行して描くので、日本武尊たちも現代の人間たちの振る舞いとは大幅に異なる。演技も誇張したものになる。それは、仕方ないと言うか、演出意図だろう。人間がもっと神の世(?)に近かった世界のお話なのだ。

■そう思って観ると、三船敏郎がやはり良くて、反対に市川雷蔵みたいに繊細な悲運の王子的な配役もありえたと思うけど、乱暴かつ豪快に押し通す演技は、あれはあれでなかなか他に頼みようがないだろう。

■意外にもテーマ性が明確で、むしろ今観ると新鮮な感動がある。戦う前に話し合いたかった、乱暴な兄は自分が討つつもりだったという熊襲弟の述懐から日本武尊が啓蒙され、改心する場面なども、素直に名場面で感動するよね、特にこの乱暴なご時世では。

■東方征伐を打ち切ってヤマトに舞い戻って、君側の奸の大伴一族を武力で皆殺しにするのかと思いきや、そうではなくて、叔母・倭姫(田中絹代)を通じて、父帝の真意に訴えて、話し合いで解決したいのだと平和的解決を求める穏健かつ理性的な姿に、日本武尊の人間としての変化、成長の跡がちゃんと刻印されているあたりも作劇の王道で見事だし、非常に感慨深い。

■そこには、明らかに敗戦で滅亡の際まで追い込まれた日本の苦い経験が仮託されていて、だからこそ、日本武尊の至る境地、その哲学こそが、真の日本誕生(産まれ直し=日本再誕)の瞬間に違いないのだ、と訴えている。結局は、大伴氏の武力に滅びるのだけど、日本武尊の理想、信念、哲学は、白鳥の姿を借りて、日本の平民を導くのだ。これ実に、ええ話やないか!今の時代だからこそ、観直すべき映画じゃないか?

■そして、このあたりの意外にも骨太な脚本構築は、菊島隆三の手腕ではないかと想像するけど、どうかなあ。八住利雄主筆ではないと思うけど、でも思想的には意外に八住利雄の主導かも知れない。後の『世界大戦争』とともに、特撮ジャンルの代表作じゃないか。(個人的には『ノストラダムスの大予言』も加えたいところだけど!)



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