基本情報
仁義なき戦い 代理戦争 ★★☆
1973 スコープサイズ 102分 @DVD
企画:日下部五郎 原作:飯干晃一 脚本:笠原和夫 撮影:吉田貞次 照明:中山治雄 美術:雨森義充 音楽:津島利章 監督:深作欣二
感想
■昭和35年から38年頃の広島。村岡組の跡目をきっかけとして、神戸のふたつの大組織の代理戦争としての第二次広島抗争が勃発する。簡単にいえばそんな話。でも、実録なので、簡単に要約できない複雑怪奇なお話。
■このシリーズは過大評価だというのが個人的な総括で、正直今回見直しても、おもしろいとは思えない。今観ると、実録路線は基本的に出来が悪いと思っていて、過大評価だと感じる。むしろ、任侠路線の末期にたくさんの徒花が咲き誇ったと思う。今見て面白いのは、むしろそちら。加藤泰とか山下耕作とか佐藤純弥とか、意外なほど傑作が多い。
■本作はなるべく避けたかった、当時まだまだホットだった広島抗争に飛び込んで、笠原和夫が取材の果になんとかモノした作品で、実録に拘泥するため、筋立てが異様に複雑になった。神戸の大組織は二つだけど、広島では山守組(金子信雄、田中邦衛)、打本組(加藤武)、広能組(文太)、村岡組(名和宏、成田三樹夫、小林旭)と、さんざん混じり合って、結局は徒労な代理戦争に疲弊してゆく。その矛盾を一手に引き受けるのが、チンピラ渡瀬恒彦のエピソードで、ラストもそこに集約する。その構築はさすがによくできていると思うけど。
■本来ならもっとスッキリと筋立てを整理すれば、ちゃんとカタルシスのある活劇になるのだが、実録だから勝手に変えられない。何しろ関係者にいろんな義理があるから。それに、広島抗争は次作で完結の予定だ。ゆえに、ちっとも面白くならない。組の幹部連中がクラブや組事務所で、鳩首協議を重ね、そこに深作が脚本以上のコメディ要素を盛り込むのだけど、そうじゃないでしょ。そこじゃなくて、やくざ同士の、ヤクザ社会の中での葛藤が自然と人間喜劇になる、それが狙いだったはず。でもそこは正直、笠原和夫はあまり得意じゃないと思う。むしろ、なぜか橋本忍とかが上手いところ。『白い巨塔』とかね。いや、今村昌平でもいいかも。『豚と軍艦』の路線でいけるよね。
■お話の頼りない中心は小心な打本組長で、これと広能の確執が複層的な代理戦争を生んでいく。盃外交が面白みを発揮してくれないと困るのだが、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりの繰り返しで、正直おもしろくならない。もっと大胆に割り切って刈り込むべきなのだ。広能は神戸の大組織につてがあり、昔は反抗した山守組に復帰するも、親分の煮えきらない態度に、再び反旗を翻すことになる。このあたりの筋書きの複雑なこと。ただ、「大体親父がだらしのうて敵味方の筋がガタガタじゃけん、こっちも安全保障付けとかにゃなるまあが!」など、ぐっと来る台詞はいくつもある。すでに組長として中間管理職にある広能だが、そこから少しはみ出しがちで、すぐにブチ切れるので、山守組の中でも孤立してゆく。でも、その背後には神戸の大組織との縁を温めている。その処世術には、観るべきところがあると映画は言っている。その犠牲となって散ってゆくのはいつの時代も若い世代だけどな。
■それに特筆すべきはDVDソフトの画質の悪さで、かなり昔のDVDだけど、色調が完璧におかしい。全編が黄色っぽい。字幕の入るデュープカットに至っては、完全にマッ黄色。いま売っているソフトはさすがにそんなことはないと思うけど、これはなんぼなんでも、東映にしても酷い。そして、これむしろモノクロで撮ったほうが、良かった気もする。ぜったいそう。
■襲撃場面はおそらく16㍉で撮っていて、粒子は荒れるし、色調はひっくり返っておかしなことになるけど、まあ深作の狙いだし、実際見応えがある。今見てもね。そこはなかなか真似できないのだ。
■そうそう、神戸の大組織の代表が穏健派の遠藤辰雄で、これがなかなかリアルに描けていて、役得だと思う。広島のなかでそんなに揉めてもうては困るがな、と困惑気味でいい味。一方で、渡瀬の恩師で普通のガッコのセンセのはずが、ヤクザたちより狂って見えるのが汐路章で、狙った配役だろうけど、面白すぎ。いつもの変に凝ったコスプレはないのに、一番ヤバそうな風情をナチュラルに醸し出す。普段は比叡平の「赤影御殿」に住まって子どもたちに習字を教える地元の名士だったのになあ。

