飢えた狼にゃ盃も茶碗もありゃせんですよ!北陸人(やくざ)の気質は描けたか?『北陸代理戦争』

基本情報

北陸代理戦争 ★★★
1977 スコープサイズ 98分 @DVD
企画:日下部五朗、橋本慶一、奈村協 脚本:高田宏治 撮影:中島徹 照明:増田悦章 美術:井川徳道 音楽:津島利章 監督:深作欣二

感想

■北陸の若き覇者川田(松方弘樹)の跳ね返りに手を焼いた年寄り親分たち(西村晃ハナ肇ら)が、大阪の大組織(遠藤太津朗、成田三樹夫ら)に泣きついたら、凶悪で知られる「殺しの軍団」金井組(千葉ちゃん)がやってくると、対抗するために名古屋の組まで巻き込んで代理戦争の様相を呈する。金井組に襲撃された川田は重症を負ってしばらく逼塞するが、親分に復讐(手首切断!)して出所すると、今度は手を組んで大阪の大組織を搦め手から追い出そうと画策する。。。

■映画のモデルの人物が実際に襲撃されて殺される事件「三国事件」が起こったもので、伝説的な映画になったのかもしれないけど、正直そんなにいい出来ではない。もともと渡瀬恒彦が出ていたのに、事故で伊吹吾郎に交代して、突貫撮影で封切に間に合わせたのも、まあ東映らしい伝説。

■川田に絡む野川由美子高橋洋子地井武男の仲井きょうだいたちとの関係が実録映画としてはユニークで、ここが創作で力点をおいた部分。ちゃんと女優が立っているのは実録映画としては貴重な部分ですね。でも、ドラマとしては、そんなに優れたものではないと思うなあ、何度見ても。高橋洋子が狂ったように兄の地井武男を刺す場面も、演出は勢いがあるけど、ドラマとしては深みがないよ。北陸人の奥に秘めた気性の激しさが発露した見せ場なんだけど、しょうじき事件が起こりましたというレベルにとどまる。このあたりは実録映画のフォーマットの限界だと思う。中島貞夫なら、ここをもっとフィーチャーしてチンピラ映画を撮るだろうし、その方がテーマもドラマ性も際立つと思うけど。

■また、北陸を舞台として、地元ヤクザの凄惨苛烈な気性を描くというところに新機軸があるけど、それほどこれまでのヤクザ映画と人間性に違いがあるかと言えば、疑問だよね。そこも限界がある。せいぜい、方言の違い程度にしか見えないものね。このあたりをしっかりやろうと思えば、今村昌平くらいの粘りがいるだろう。浜辺に埋めてジープで轢き殺すというリンチ(?)にその陰惨さを象徴させているわけだけど、なんだかなあ。川田の言動にも単なる狂犬ではなくて、盃外交も駆使して、生き残るためには手段を選ばないしぶとさを表現していて、そこは悪くないけど。夜桜銀次とか石川力男よりは理解しやすい気はする。

■役者は揃っているけど、西村晃の雑な使い方は寂しい限りだ。60年代の邦画各社での目覚ましい巧演を知っているから、どうしても寒々しい気分になるよなあ。まあ、実際年取ってるんだけどね。



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