『遊撃の美学 映画監督中島貞夫』

■考えてみれば、中島貞夫の代表作って、重要な作品がなかなか観られないのだ。特に「唐獅子警察」なんてレンタルビデオ店でも、あまり見かけた記憶がない。「実録外伝 大阪電撃作戦」も、何故か見かけないなあ。

中島貞夫の映画に関して特に謎なのは、やくざ映画を描くのに在日朝鮮人被差別部落の問題を避けて通るわけにないかないという強い意志の存在で、そもそもデビューして間もない頃に倉本聰と「山窩」を企画して挫折するや東映を辞めようかと落ち込むほどに、終生のテーマとしたマイノリティに対する興味の持ち方である。前述の2作品についても、分かる人には分かるような描き方で被差別部落出身のチンピラたちが登場するらしい。そして、監督の視点はそうしたチンピラたちの青春像に置かれているのだ。中島貞夫のこうした視点の底には、京都の撮影所での生活というものが大きく影響しているように思えるのだが。

■一方で、何度も登場する竹中労との確執も興味深い。「祇園祭」といい「浪人街」といい、この謎の人物の関わる映画企画は揉めに揉める。また、東映映画を考える際には労働組合の問題を抜きにはできないので、誰かこのあたりを分かりやすく調査、分析してほしいものだと思うのだが、映画研究者の皆様にお願いしたいところだ。

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