■大男のギャングマロイに元愛人ベルマを探し出すよう頼まれた私立探偵マーローだが、その行く先で次々と関係者が死んでゆく。町の有力判事の家で、その若妻ヘレンと出逢い、翻弄されるうち、娼館の女主人に拉致される。果たしてベルマとは何者なのか・・・
■超有名なハードボイルド小説の映画化で、ロバート・ミッチャムがフィリップ・マーロウを演じて、人生に疲れきった男を余裕で演じる快作。当然、原作はもっと複雑なプロットなのだろうが、映画ではかなり簡潔に整理されている。なにしろ95分しかないのだから、事件の真相も想像はつくわけだが、真面目にハードボイルドの世界を構築しているので、その雰囲気描写だけでも見ごたえがある。
■なにしろ運命の女をシャーロット・ランプリングが謎めいた存在感で演じるのだから、その点他の追随を許さない。実際には登場場面も少ないし、大した演技を見せるわけでもないのだが、とにかく役得だし、彼女の自然な立ち居振る舞いが、もう幻想的な、この世のものでないオーラを発散して、なにかヤバいものを目撃してしまった気になる。
■マロイとベルマにキングコングとアンの姿を重ねている見立ても面白く、製作にジェリー・ブラッカイマーが参加しているのも興味深い。「スターウォーズ」の登場でハリウッド映画が古典的な娯楽映画に回帰する直前の、微妙な時期に製作されたハリウッド映画なので、決して大作ではないが、忘れがたい小品といった風情だ。