色ごと師春団治
1965 スコープサイズ 89分
NFC
原作■長谷川幸延 脚本■館直志、中島貞夫
撮影■鈴木重平 照明■和多田弘
美術■矢田精治 音楽■菊地俊輔
監督■マキノ雅弘
■後家殺しと呼ばれた落語家春団治の破天荒な半生を藤山寛美主演、南田洋子、丘さとみ、藤純子が彼と関係する女たちとして登場する。岡八郎や平三平といった懐かしい喜劇人も脇役で登場するが、とってつけたような役ではなく、ちゃんと脇に徹した役柄になっているので落ち着いて観ることができる。
■芸道物になるのかと思いきや、南田洋子にあんたは芸の道はわかっていても、人の道がわかっていないと説教されるも、特に反省した様子も無く、その後は胃がんで没する場面も、泣かせ場ではなく、先に死んだ車屋(長門裕之)の幽霊が迎えに来るというコミカルな掛け合いに集約され、花道のような雪道をふたりで消えてゆくという人を食った幻想的な幕切れとなる。
■大半は芸道物、人情物、夫婦物、浪花物といった定番路線を情感と笑いをふんだんに取り込んだスタイルでしっかりと描き出して秀作かと期待させたが、ラストの幕引きの仕方には賛否が分かれるだろう。藤純子は、年齢不詳の妖しさを振りまいて、妙な色気を発散している。なぜか着物の胸元がだらしなくて、白い胸元が開け広げなのは、マキノ演出だろうか。
■「いれずみ半太郎」はカラーで構図重視の画作りだったが、本作はモノクロで芝居重視の画作りがなされており、その映像構成の対比が興味深い。