ギフト

ギフト
(THE GIFT)
2001/ビスタサイズ
(2001/6/23 美松映劇)

感想(旧HPより転載)

 夫を工場の事故で亡くし、3人の子供を抱えながらカードを使った占いで生計を立てていた主人公(ケイト・ブランシェット)は、失踪した街の有力者の娘が殺害されていることを幻視する。主人公の予告したとおりの場所で遺体が発見され、主人公に怨みを抱いて脅迫を続けていた粗暴な男(キアヌ・リーブス)が犯人として逮捕され、裁判の結果有罪が確定する。しかし、事件はまだ終わってはいなかったのだった。

 という筋立てだけで大体予想のつくようなありふれたサスペンスなのだが、こうしたメインストーリーに主人公を唯一の友人として慕う精神的な問題を抱える怪しげな中年男のエピソードが絡みつき、さらに複雑な人間模様を奏で始める。

 この映画ではこのデリケートな存在を誠実に演じたジョヴァンニ・リビシーがなんといっても役得で、霊を見たり、人の運命を予知したりする特殊な能力を生まれつき備えている主人公が町に住む人々の日常的な些細な悩み事の相談などを聞きながら人々の心と身体を思いやる活動が一時は誤解や偏見の眼に曝されながらも、その特異な能力が確実に他人の役に立っていることを告げて終わる爽やかなラストには、正直ちょっと感心したぞ。しかも、この映画の監督はあろうことかあのサム・ライミなのだ!

 特異な能力を持つ故に人々から迫害され苦難の道を歩まざるを得ない主人公の境遇を何故かキアヌ・リーブスが演じる小心な差別主義者の存在ひとりに代表させてしまうのはちょっと無理があると思うのだが、オーソドックスな物語を実に大人しくステレオタイプな語り口で語りきったサム・ライミのそのここ十数年間の変わり様は実に感慨深いモノがある。

 正直言えば、画面構成や編集など、ここまでハリウッドの定石に従うこともなかろうにと思うのも事実なのだが、十分にウェルメイドなサスペンス映画なので、あまり文句を言う気にもならない。超能力者を扱った映画のなかでも上出来の部類にはいるだろう。あくまでも日常の視点から物語世界を構築した脚本の巧さが光る。

 一色沙絵が主演した某映画のラストに泣かされた人は騙されたと思って観に行くことをお薦めするぞ。

  (追記)
 改めて観直すと、虚仮威しのショックシーンが浮き上がって見えてしまうのだが、主演のケイト・ブランシェットの特異な個性が、アメリカ南部の小さな町に夫の遺族年金で暮らす未亡人で、サイキックという難役の日常を軽々と体現してしまう様に驚かされる。「ロード・オブ・ザ・リング」もいいけど、もっと良い映画に出て欲しいぞ。 

ちなみに、某映画とは森田富士郎が撮影した「蔵」のことです。
(2002/10/5 レンタルDVD)

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