ソラリス ★★★

SOLARIS
2004 スコープサイズ 95分
BS2録画


 惑星ソラリス軌道上の宇宙ステーションで異変が発生、調査に向かった心理学者の前に死んだはずの妻が現われる。混乱した男は妻と名乗る女を宇宙空間に追放するが、妻は再び帰って来て、自分は何者なのかと悩み始める・・・
 タルコフスキーの「惑星ソラリス」もうろ覚えなのだが、ソダーバーグによるリメイク作も十分にタルコフスキー的じゃないかと思うぞ。オリジナルのファンには物足りないのかもしれないが。ソダーバーグの筆致はホラー映画でもアクション映画でもなく、ヨーロッパ映画的な静謐な心理劇である。

 最大の欠点は主役がジョージ・クルーニーという点で、彼の佇まいはこうした繊細な心理劇には全く似合わないのだ。妻を演じるナターシャ・マケルホーンについても微妙に疑問があり、彼女の容貌は怪奇映画にこそ相応しいのではないか。

 物語の基本線としては怪奇映画そのものなのだが、夫婦愛のドラマとしてコンパクトに再構成したソダーバーグの考え方は間違っていないし、ハリウッド的には十分に挑戦的だろう。ただ、映画としては「イベント・ホライゾン」の方がよほど通俗的に面白いのだが。

 特にクリフ・マルチネスの音楽が上出来で、映画の世界観を象徴的に表現している。いかにもSF映画らしい、宇宙の深き闇に吸い込まれるような感覚を催す幻想的なサントラだ。

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