16ブロック ★★★★

16BLOCKS
2006 スコープサイズ 101分
MOVIX京都(SC9)


 酒浸りで人生に疲れた初老の警官(ブルース・ウィリス)が夜勤明けに命じられたのは、裁判の証人(モス・デフ)を16ブロック先の裁判所に送り届ける任務だった。ところが移送中に何者かに襲撃され・・・

 職人監督兼敏腕プロデューサー、リチャード・ドナーの久々の純粋アクション映画で、小気味良い小品アクション映画かと思いきや、クリスマスに観るのが相応しいと思わせる実に”良い話”なので、驚いた。地味な映画だが、大人の鑑賞の相応しい傑作である。

 ほとんど文句をつけるところが思いつかないのだが、なにしろリチャード・ウェンクの脚本が素晴らしい。主役の2人を次々に襲う窮地をどう切り抜けるか、というアクション映画の工夫のしどころに、手抜き無く機転の利いたアイディアを投入し、初老の警官が絶体絶命の危機に隠された才能を発揮する様を描き出し、ラストのある決断を導き出すまで、作劇に関する抜かりが無い。仕掛けばかり派手になり頭を使ったストーリー・テリングがなおざりにされがちな昨今、これほど頓知の利いたアクション映画はなかなか貴重だ。

 これを映像化するリチャード・ドナーの演出も手堅く、引き締まったもので、無駄が無いし、無意味に煽ったりしない誠実な演出姿勢を賞賛したい。ただ、この脚本ならジョエル・シュマッカーなどでも傑作映画に仕上がっただろうとは思う。

 主人公のかつての相棒で敵対することになるデビッド・モースという役者も、これまでなんとなく印象に残る脇役という雰囲気だったが、ここでは非常に渋い役作りで圧倒的な存在感とリアルな人間味を発しており、主人公との対立に単なる図式劇を超えた深みをもたらしている。いかにもアクション映画に相応しい、いい役者だ。

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