SPIRIT ★★★★☆

スピリット(字幕版)

スピリット(字幕版)

霍元甲
2006 スコープサイズ 103分
ユナイテッドシネマ大津(SC1) 


 父親の跡を継いで天津一の武術家となった霍元甲は、慢心のあまり敵対する武術家の命を奪い、その報復を受け、絶望の淵に落ちる。辺境の村に流れ着いた彼を救ったのは、盲目の娘だった。生き直す内に武術の真意を悟った彼は、当時列強の侵食を受けていた上海で、異種格闘技大会に出場することに・・・
  「HERO」「LOVERS」のプロデューサーのビル・コンが世界戦略の元制作した中華アクション大作だが、これまでのVFX多用によるビジュアル優先の戦略から、活劇とドラマの密度を高める方針に転換し、見事な傑作を生み出した。監督は「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」「フレディVSジェイソン」のロニー・ユー。一世一代の傑作といっていいだろう。
 戦うことの意味と武術の意味を突き詰めて、最後の武術映画としたいというジェット・リーの意欲と心意気が全編に満ち溢れた文句無しの傑作である。盛りだくさんのアクション場面は、ややハリウッド的にカットを割りすぎなのが勿体無いのだが、ワイヤーを駆使したジェット・リーの不可能アクションの切れ味は満点である。戦うもの同士の心意気を謳いあげて、ラストの悲壮美に持ち込む作劇は、久々にアクション映画の醍醐味を心行くまで味わわせてくれる。アクション映画のカタルシスの高純度な結晶体を削りだしているのだ。
 後半に登場する原田真人中村獅童の日本人コンビが儲け役となっており、日本と中国という因縁の二国関係に対する言及まで含まれている政治劇でもある。純粋アクション映画に思想性と政治性を織り込んだ圧倒的な意欲作であり、中華アクション映画の金字塔である。
 ただし、日本公開版のエンディングに流れるタイアップ曲は、せっかくの映画の感動の余韻をぶち壊しにする場違いなものなので、要注意。エンディングはすぐに退場するのが賢明だ。この傑作にヘッポコな楽曲を選曲した配給会社は、猛省すべし。

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