MUNICH
2006 スコープサイズ 164分
TOHOシネマズ二条(SC7)
1972年、ミュンヘンオリンピックの選手村に侵入した”黒い九月”メンバーがイスラエルの選手を殺害、イスラエル政府は犯人11人を暗殺するためモサドとは別個に活動する暗殺部隊を編成しする。身重の妻を祖国に残してリーダーとして欧州に潜伏する主人公だが・・・
スピルバーグが「宇宙戦争」に続いて怒涛のハイペースで製作した実録アクション映画。実際のところ、もっと政治的な複雑な事実関係が錯綜する難解な映画かと思いきや、思いのほか単純な物語に整理されている。端的に言うと、暗殺部隊を主役としたコマンドチーム物なのである。それ以上でも以下でもないというのが素直な印象だ。
個々の場面の緊迫感と臨場感はさすがにスピルバーグで、隙が無いのだが、主人公が復讐の連鎖のむなしさに気づいてゆく後半の作劇が弱く、ラストの重要な台詞にしてみても、普通もっと早く気づくはずだろう、と観客に思わせるようでは、十分な説得力を持ち得ていない。
戦場の非人間性と戦闘行為の残虐さはスピルバーグの影響下にある「ブラック・ホーク・ダウン」のほうがよく描き出しているし、戦争やテロの連鎖に対する批判のあり方とその語り口の工夫は「ロード・オブ・ウォー」のほうが洗練されている。