基本情報
花嫁は十五才 ★★★☆
1964 スコープサイズ(モノクロ) 79分 @youtube
企画:坂上静翁 原作:藤原審爾 脚本:田村孟、森川英太郎、江崎実生 撮影:萩原憲治 照明:三尾三郎 美術:坂口武玄 音楽:伊部晴美 監督:江崎実生
感想
■東京に出てきた一人ぽっちの青年(山内賢)は、女子中学生(和泉雅子)と出会い、彼女の父親(下元勉)が不慮の死を遂げると、二人で助け合って生き抜いていこうと誓う。だが、彼らはまだ17歳と15歳の少年少女だった。。。
■江崎実生の監督デビュー作で、普通ならSP映画なのに、りっぱな長編だし、内容的に大塚和の社会派リアリズム映画路線だけど、坂上静翁の製作という、ちょっと異色の成り立ち。
■脚本もわざわざ松竹ヌーヴェルヴァーグ一派に頼んだ意欲作。実際、かなり出来はよくて、アヴァンからぐっと掴む。民法の婚姻規程が出てから、タイトルがどーんと出るだけで一種の完結感がある。テーマも明確。凄いね。
■少女の父親が強盗事件で死ぬあたりはどうも派手すぎて浮いているけど、原作由来だろうか。若い二人の出会いから、馴れ初めから、接近する経緯から、実によくできていて、ひたすら感心。心理描写に、ロケ撮影が見事な効果を発揮するのは、日活映画の伝統の美風。シナリオも端的だけど、演出のメリハリが素晴らしくて、撮影も凄い。流して撮るところと、みっちり狙って撮る場面を明確に区別しているようだ。二人が初めてキスする長い移動カットなど、夕暮れ狙いだし、二人がダンスするように互いに回り合うユニークな振り付けとか、移動しつつ接近するキャメラワークとか、本来なら話題になってもおかしくない、いろいろとすごい演出。鳥とか魚とかの、求愛ダンスをモチーフにしているはずだけど、その発想がユニーク。
■第三幕で、仮祝言をあげた二人を、社会制度とか社会システムとか周囲の好奇心や偏見が苛む様子を極めてリアルに、えげつなく描いて、これも凄いことになっている。特にアパートの大家の初井言榮のサディスティックな攻め立て具合が絶品で、『愛と死をみつめて』の前夜祭。まあ、これをバッチリ演じる役者も凄いけどね。社会や国家がなんだっての!と急に燃え盛る新聞配達屋の女将、奈良岡朋子も素晴らしい(新劇)ギャグだ。法令違反の事実婚(綺麗な関係)が、反社会的行為としてぐいぐい糾弾されるから、ドラマ的には非常に盛り上がるし、テーマの深耕もできていて、観ていて、腹が立ってくる。このあたりは傑作だと思う。
■ただ、ラストシーンが不完全燃焼で、それで終わり?という筋書きを、ぐるぐる回る派手なキャメラワークでごまかすのは残念。どう決着させるのかと期待したのに、これじゃないよね。あと、中盤で山内賢が乱暴に暴れまわるあたりとか、強盗事件の件がきちんと回収されないのも、座りが悪い。
■ただ、江崎実生の腕とセンスの良さは特筆もので、舛田利雄、蔵原惟繕などの良いところをしっかり受け継いでいるし、演技のアレンジが妙に巧いと思う。山内賢も和泉雅子も、明らかに通常運転よりも質の良い演技を切り取っている。どんな演出ぶりかは知らないけど、役者を追い込んで無理させずに、いいタイミングで素材の生の雰囲気を優先して、本番を切り取っているのではないか。それにしても、立派な仕事だと思う。
