基本情報
七つボタン ★★★
1955 スタンダードサイズ 92分 @アマプラ
企画:高木雅行 脚本:古川卓巳、五島福江 撮影:横山実 照明:藤林甲 美術:高田一郎 音楽:斎藤一郎 特殊技術:日活特殊撮影部 監督:古川卓巳
感想
■戦争末期、昭和二十年、海軍予科練の生徒(少年)たちの厳しい訓練の日々を綴った戦争映画、というか青春映画。飛行機乗りを目指しながら、戦局悪化の煽りを受け、まったく飛行機の操縦訓練はなくて、しまいには、お前ら訓練未了だから特攻機にはとても載せられないから、水上特攻に行ってもらう、と言明される始末。
■主人公の長門裕之は、班の親友を教官(三國連太郎)に責め殺されるわ、同じく恋人(芦川いづみ)の写真を焼き捨てられて戦意喪失、ついに脱走する。この教官が三國連太郎で、かなり屈折した人間像を描いているけど、これがどうも煮えきらないから、終盤が弱くなった。新珠三千代とのロマンスも、どうも生きていない。生徒には恋人との手紙など懲罰の対象だといいながら、自分は最期まで女の手紙を隠し持っていて、死に際に生徒に暴露されることになる皮肉な(意地悪な)展開は、もっと的確に生かされるべきだと思うがなあ。それに対する生徒の反応も単純なものではないはずだ。そこが描かれないと、せっかくの仕掛けが弾けないよね。
■三国は、孤児で、行くところは軍隊しか無かったけど、戦場で足をやられて教官に就任した、挫折した男で、生徒を厳しく攻め過ぎて、上官からの注意されるけど、一方で生徒たちのことを思いやっているようにも見える。単純な人間像にしたくないという狙いはわかるけど、最期もなぜ自殺に等しい行動をとったのか、その思いが明瞭でなく、なんだかどこに視点をおいてみればいいのか、混乱するのだ。結局彼が最も悲劇的な人物で、軍隊に過剰適用したために、かえって戦後には身の置場を失ってしまう悲劇性が、いまひとつ際立たない。悪くない着想なのになあ。
■しかも、水上特攻を命じられた日が8月15日で、たまたま運が良くて命拾いした主人公も、なんだか締まらない。死ぬつもりでいた彼らが、そんなに単純に喜んで終わりなのかなあ?
■日活再開当初の良心作で、オールスターキャストも驚くけど、兵舎の広大なステージセットとか、豪快な空爆場面とか、結構な大作なのだ。スタンダードの画角なので、セットの奥行きがえげつなくて、これはシネスコ時代には完全に喪われた空間設計だ。