基本情報
赤ちょうちん ★★★
1974 スコープサイズ 93分 @アマプラ
脚本:中島丈博、桃井章 撮影:萩原憲治 照明:川島晴雄 美術:山本陽一 音楽:石川鷹彦 監督:藤田敏八
感想
■中島丈博のシナリオは通常、明快なお話で、あまり困惑することはないのだけど、この映画は藤田敏八風味が強いのか、何度観ても腑に落ちないのだな。ラストで秋吉久美子が発狂する場面はトラウマ級に鮮烈だけど。
■4度の引っ越しを続ける若いカップル(高岡健二と秋吉久美子)のお話で、引っ越し貧乏と言われるけど、本作では若い娘が徐々に精神を病んでゆく。見ようによっては、心理ホラーともいえるのだが、中島丈博もそんな風には書いていないし、藤田敏八もそんなつもりじゃない。
■前半にアパートに謎の中年男(長門裕之)が強引に転がり込んでくる部分もすんなりとは飲み込めず、藤田敏八は映画の中に自分の分身を投げ込む傾向があるけど、その意図は不明だ。ガンで余命わずかというけど、途中でカモメの舞い飛ぶ浜辺に打ち捨てられて退場するし、何のためのキャラだったのか?彼を見殺しにした報いを受けて、彼女は鳥(カモメ、鶏)に象徴される何かによって、発狂するのか?ホントにそんな構成?俺達人生に踏み迷う中年男を粗略に扱う新世代の若者たちにはきっと報いがあるぞ、という脅迫?でも、中年男をしばくのは高岡健二の方で、本当に報いを受けたのは彼なのかもしれない。というお話?しらんけど。
■唐突に義眼が小道具として登場するのも強引で、シナリオを読むともう少し設定が描かれるけど、まあ無理やりな外挿ですね。一緒に暮らしながら、女がはみ出してゆくのにちゃんと気づいてやれなかった男を、お前の眼はこの義眼のように何も見えていないのだ、だからその報いを受けるのだと揶揄する小道具だろうけど、そのグロテスクさが青春映画をはみ出していないか?
■「とりでんかん」(鳥癲癇?)というアレルギー症(神経症?)が登場するけど、これは作者の創作らしい。このあたりも、人を食ってるけど、どんな発想なのか?でも、鳥が本作のモチーフであることは確実で、発狂シーンにわざわざカモメの影をあしらっている。これは現場でもっと何かないかと粘る藤田敏八の思いつきで、助監督の長谷川和彦はじめ、スタッフは呆れながら切り紙細工をしたそう。でも、出来上がりを見て感心したそう。
■ロマンポルノ移行後の一般映画製作のテストケースでもあり、低予算だけど力が入っていて、配役は豪華。当時おなじみの三戸部スエが大活躍。悠木千帆に南風洋子に中原早苗という贅沢(?)さ。さすがに唐突な石橋正次は特別出演だね。
補遺
■深沢七郎の短編「月のアペニン山」に似ていると言う指摘が当時あり、実際のところ無意識に下敷きにしたのかもしれない。なにしろ、かなり変なお話なので、そうそう普遍的に色んな人が散発的に思いつく類ではない気がするから。
