修羅雪姫 怨み恋歌
1974 スコープサイズ 89分
チャンネルNECO
原作■小池一雄、上村一夫 脚本■長田紀生、大原清秀
撮影■鈴木達夫 照明■石井長四郎
美術■樋口幸男 音楽■広瀬健次郎
監督■藤田敏八
■死刑執行直前に秘密警察に拉致され、主義者徳永乱水から秘密情報を奪取することを命じられたお雪だが、徳永乱水の協力者となり、乱水が捉えられると、貧民窟に潜んで乱水の弟である医師とともに、反抗の機会を伺うが・・・
■70年代テイスト満開のバイオレンス活劇だが、撮影が当時売り出しの鈴木達夫ということで、カッコいいショットがいくつもある。監督が藤田敏八なので、日活的な長廻しも多用され、冒頭の梶芽衣子の殺陣や、中盤の貧民窟で集団リンチにあう南原宏治のシーンなどが優れる。南原宏治は、秘密警察の長官岸田森の手下で、一種の異形の者として登場するのだが、実質的にほとんの何の役にも立たず、両腕を切断されて切り捨てられるだけ。なんで南原宏治が演じているのか理解に苦しむ。
■なんといっても岸田森が純悪役の”ラスボス”として登場する映画として貴重な作品なのだが、さすがに、悪役としてのボリューム感が足りない感じは否めない。吸血鬼のイメージそのままの役作りは楽しいし、力は入っているのだが、藤田敏八の映画は長廻しがメインなので、岸田森のアップショットでの得意技が使えないのが、残念だ。やはり、岸田森は実相寺昭雄とか山本迪夫とか岡本喜八といった、カッティングの演出との相性がいいのだ。串刺しで血しぶきをあげる最期も素敵なのだが、山本迪夫なんかに比べれば撮り方が雑ですよ。