■ニュープリントのフィルム上映は観たことがないので、スクリーンで観るのは、オールナイトの真っ赤なプリント以来だな。さすがに傷もないし、明るいし、ピカピカにきれいな上映。ただ、フィルムグレインを除去しすぎと感じた。合成カットはもっと粒子が荒れていたはずで、そこはやり過ぎと思ったな。
■冒頭でガメラがバンバン暴れたあとは、ガメラが再登場するのが45分時点。本郷功次郎と江波杏子の二人が再登場するのが55分時点、その後の展開が45分間という構成で、なかなか含蓄が深い。前半は大胆な省略を効かせて、サクサクと時間が飛ぶ。ここをもっと念入りに描くと、映画は2時間を超えるし、バランスが崩れる。ガメラは完全に脇役で、物語の主筋はバルゴンのお話。ガメラは通りすがりの暴れん坊の役どころ。たまたまかち合ってうまくいったから良かったね。
■何回観ても燃えるのは、バルゴンの生態描写の念入りなところと、それに即した作戦行動がちゃんとサスペンスを生むところ。特にダイヤモンド作戦は二段階で展開され、シンプルなカッティングが効果絶大で、本作の白眉だよなあ。木下忠司の劇伴が最高で、これ代表作だと思うな。誰が怪獣映画に呼んできたのかと思うけど、これは見事な成果だと思う。
■映画作法の教科書では「語るな、見せろ」というのがイロハのイの教えで、台詞で心理描写やテーマを語るのはスマートじゃなくて、映像で語るのが上策とされている。ここではバルゴンの瞼の演出が、まさにそれで、なにしろ怪獣なので複雑な心理描写があるわけではないけど、いってみれば、怪獣は映像でしか心理描写ができない対象である。そこに、何を仕込むかという点で、本作は東宝を超えた部分がある。下手にやると、単なる人間振りのパントマイムになってしまうけど、バルゴンはあくまで獣だった。そこが永遠の美点。
■でもこれは演出上の工夫で、なにしろ脚本家は、冒頭でガメラの心理や行動を全部ナレーションで語っているからね。しかも、映像に先駆けて全部喋ってしまうから唖然とするよね。
■本郷功次郎はあまり乗り気じゃなかったらしいけど、ムチムチした筋肉質の肢体が、まさに「語るな、見せろ」の成果で、南洋の娘、江波杏子の心を鷲掴みする。複雑な作劇じゃないけど、ちゃんとメロドラマに決着するのは、田中重雄の持ち味だし、バルゴン関係を全部説明してくれる江波杏子の説得力も凄いよね。あの役、他に演じられる女優いないよ。東宝なら水野久美だろうけど。
■メロドラマとしては、完全に婿取り物語になっているのもユニークで、ラストの「一人じゃないわ」は傑作。本郷功次郎は至ってぼんやりしているけど、江波杏子は肉食系で、バルゴンを始末することはできなかったけど、日本で婿をゲットして、故郷に錦を飾るのだ。
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