大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン ★★★☆

■デジタルリマスター版のDVDを購入。確かに解像度は高いようだが、大映映画独特のこってりとした色彩と深い陰影は十分に再現されていない。この程度ならブルーレイを購入するまでもない気がする。ただ、ナイトシーンは観やすくなっている。
■サイレント時代からの大ベテラン監督、田中重雄の重厚な演出がなんといっても貴重で、怪獣映画なのに全体はメロドラマ仕立てで、江波杏子を必要以上にエロく撮るし、高橋二三のくすぐり的なギャグのさりげない描写も非常にセンスがいい。
■金欲に狂った小悪党、藤山浩二の脂ぎった暴れっぷりがとにかく最高で、その狂気が徐々に高まっていくプロセスがバルゴンの侵攻と並行して描かれ、この二つの怪物の対比がなんとも名状しがたい深い含蓄を味わわせてくれる。琵琶湖での惨劇に至るシーンも非常に見事な演出と撮影で、何度見てもゾクゾクするサスペンスになっている。人間の業の深さと怪物の本能が交差する見事な作劇だ。何度も見ていると、藤山浩二に肩入れしたくなってくるから不思議だ。
■木下忠司の劇伴も非常に丁寧に映像に合わせて作曲されており、劇的効果は抜群で、数々の名シーンを生んでいる。



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