大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン ★★★☆

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大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン
1966 スコープサイズ
レンタルDVD

脚本■高橋二三
撮影■高橋通夫 照明■柴田恒吉
美術■柴田篤二 音楽■木下忠司
特撮監督■湯浅憲明 特殊撮影■藤井和文
美術■山口煕、井上章 合成撮影■金子友三
監督■田中重雄


 一言で言えば、夜の魅力に取り憑かれた怪獣映画といえるだろう。
 大映東京(多摩川)撮影所の、大映京都とは異なる様式ながら、大映ならではの夜の質感を全面的にフィーチャーして、大映ならではの怪獣映画の質感を提示している。
 ナイトシーンをふんだんに設定し、イルミネーション輝く夜の神戸港、冷凍光線に白く閉ざされる夜の大坂城、霧煙る夜の琵琶湖、それぞれのシチュエーション下で、爬虫類らしい皮膚のテカリを強調する照明で浮き上がる異形のバルゴンの姿が、欲望に沸き立つ人間どもの黒々とした愚行と対照され、大きな怪物と小さな怪物の対比を形作っている。
 特に、ニューギニアの奥地でオパールを発見した喜びもつかの間、サソリの毒で絶命する早川雄三「目が見えへん、目が見えへん・・・」の哀れな末路の熱演は多くの少年達のトラウマになっているだろうし、人非人の藤山浩二の悪人ぶりは小気味よいほどの無軌道さでバルゴンの巨大な舌に巻き取られる前代未聞の最期とともに、少年達の人間観を決定的に形作ったことだろう。
 そして、大人になった私たちは、本郷功次郎江波杏子のロマンスがあまりにも大人びたエロスと共に描き出されていることに驚くことになる。藤山浩二に腕に傷を負わされた本郷の前に膝まづいて傷口に口を添える江波杏子の姿を、本郷の股間に顔をうずめる構図で描き出し、口元に血を含んで彼を見上げる江波杏子のショットは、サイレント期からのベテラン監督田中重雄の何がしかの主張であったはずだ。
 映画は肉親を喪いたった一人になった本郷に、「一人じゃないわ」と返す江波杏子で終わる。夜の物語は、二大怪獣の流血の死闘をよそに、南洋の孤島に生まれた彼女の婿取りの物語として回収されてしまうのだ。夜に相応しい主題は血とエロスに尽きるというわけである。



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