皇帝 ★★

皇帝
1998年 宝塚星組公演
作■植田紳爾 作曲・編曲■吉田優子、寺田瀧雄 演出■植田紳爾、石田昌也
出演■麻路さき星奈優里、稔幸、絵麻緒ゆう、邦なつき

ローマ帝国皇帝ネロを主人公に、暴君ネロ伝説の生まれた真相について、独自の解釈で劇化したミュージカル。ネロの暴虐の裏には、母親アグリッピナに対する愛憎が隠されていたという物語を、まるで伊藤大輔の傑作「反逆児」の中村錦之助杉村春子の母子のように描く。
■その筆捌きは非常に時代劇的で、荘重ではあるのだが、心理劇としての説得力に乏しく、様式美に止まった感がある。特に、麻路さきの演技力には大いに疑問がある。
■ネロが英邁な皇帝として崇拝されるために、母は敢えて悪女を演じていたという筋書きは、いかにも時代劇らしい逆転の発想で、逆にネロは母に汚名を被せないために、自分こそが暴君であると振舞うようになるという、捩れた母子関係が見せ場なのだが、さらに妻のオクタヴィアまでネロの前に命を投げ出すというのは、いささかやり過ぎの感がある。

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