グラン・トリノ ★★★☆

GRAN TORINO
2009 スコープサイズ 117分
ユナイテッドシネマ大津(SC7)

グラン・トリノ [DVD]
■宣伝では感動の名編といった風情だが、イーストウッドが自分で主演するのだからそんなに行儀のいい映画ではなくて、正攻法のアクション映画であり、正真正銘の正調イーストウッド映画である。世の中では誤解があるかもしれないが、本来のアクション映画とはこういう映画のことを言うのであって、ジェリー・ブラッカイマーの作っているような代物は、スペクタクル映画なのだ。
■脚本はニック・シェンクという若者らしいが、完全にイーストウッドの当て書きにしか思えず、「センチメンタル・アドベンチャー」とか「ハートブレイク・リッジ」などをすぐさま思い出す、既視感のある映画である。しかし、テーマ設定の念入りさと、イーストウッドの肩の力の抜けた演出ぶりで、アクション映画らしい親しみやすさと同時に、厳格な風格さえ漂う佳作である。でも個人的には「チェンジリング」のほうが好きだが。
アメリカ魂とは、アメリカに生まれることでも、極端に言えばアメリカに住むことでもなく、アメリカ人精神を受け継ぐものはすべてアメリカ人なのだという、壮大な妄想とも思える信念を感動的に伝え、人間にとって生きることと死ぬこととはなにか、といった大きなテーマを、頑固で偏屈な爺さんの姿の滑稽さを笑ったり、その行為の気高さに魂を震わせたりしているうちに自然と自らの血肉とすることができるという映画芸術の権化のような映画である。
■モン族のコミュニティを演じるのは実際のモン族からオーディションで選ばれた人々だが、少年タオの役ははもっと少年っぽい、「センチメンタル・アドベンチャー」のカイル・イーストウッドくらいの折れそうな繊細さがほしいところだ。神父を演じるクリストファー・カーリーという役者は、あまり知らない顔だが、いかにも新米のナイーブな神父という役柄をキューピーのような顔立ちだけで納得させるいい配役である。

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