感想(旧ブログより転載)
おんな牢の女囚おなみ(安田道代)はおんな牢を管理する鍵役(戸浦六宏)に目の敵にされ、犯されてしまう。その後も鍵役の卑劣な仕置きが続くが、鍵役がヤクザから金を受け取り、卑劣な手段を使ってその情婦(長谷川待子)を牢から出したことを知った彼女は同じ牢の仲間たちと団結して破獄を決意する。牢内の争いで色情狂の女囚が殺されたとき、そのチャンスが訪れる。牢名主(中原早苗)以下の女囚達は鍵役とその悪巧みに結託して人のいい女囚を毒殺した医師を人質に、上役への直訴を求めて、牢を出るが・・・
秘録シリーズ第一作「秘録おんな牢」の続編だが、「秘録おんな蔵」を挟んだシリーズ第三作。他にしめぎしがこ、三木本賀代といった秘録シリーズの常連メンバーに、山本薩夫作品の顔とも言うべき永井智雄が戸浦六宏の上役で登場、伊達三郎、木村元の顔も見られる。
牧浦地志、西岡善信という大映生え抜きのスタッフによる映像設計はいつもながらの贅沢さで、戸浦六宏の悪役ぶりも分かり易い恐怖映画のような下からのライティングで一層凄惨さが引き立つ。この作品では特におんな牢の冬枯れの情景が限られた舞台設定の中でも強い印象を残し、曇天のホリゾントをバックに牢を取り囲む塀の上に設置された忍び返しの鋭利な切っ先が冷たいシルエットを形作る情景カットや、処刑場の情景を高いキャメラアングルから捉えて、大映映画ならではの寒々とした枯れ枝を左右にのばした表現主義的な立木をレイアウトした構図の様式美などに隠しようもなく優れた映画美が顕現している。
だが、おんな牢の叛乱が取締役人の上司への直訴だけで収まりがついてしまうクライマックスの詰めの甘さがこの映画の最大の欠点で、群像劇としての構成が主人公の肉付けを大甘にしてしまった。大映末期にあっても安田公義らしいコンテのしっかりした画作りは健在なのだが、この監督は何故か脚本に恵まれないのだ。