テラーとホラーの違いって、知ってる?風間賢二著『 怪異猟奇ミステリー全史』

■怪奇猟奇ミステリー、怪異耽美小説には眼がない質なので、古書店で買ってしまいました。昔はいっぱい読みましたね。今も、屋根裏に眠っている。日本の戦前、戦後の同ジャンルの歴史は、昔の中島河太郎とか権田萬治の本などで凡そ知っているので、そもそものゴシック小説の発祥の経緯あたりが新鮮で、目から鱗が大量に落ちました。へー!の嵐です。特に、前半部分が。

テラーとホラーの違いって、知ってますか?

■「ホラー」と「テラー」と「スリラー」て、ジャンル映画の看板として、昔からいろいろ使われていて、その意味を厳密に誰も気にしていなかったけど、よく考えるとやっぱり混乱する。もともと、「テラー」が心理的恐怖で崇高美を含有し、「ホラー」は生理的肉体的な恐怖をいうらしい。なので、序列的には「テラー」が上にくる。キングによれば、さらにその下に生理的嫌悪感を扇情的に刺激する「グロスアウト」という階層があるらしい。流行りの拷問系とかですね。いわゆる「ポルノ」に属するものでしょう。

■本書とは離れるが、日本では「ポルノ」といえば、性的なコンテンツを主に意味するけど、要は「扇情的」なものはなんでも入り、原始的な感情を無理やり惹起する内容を指すらしい。若い書き手は「感動ポルノ」なんて言葉すら使うけど、さすがに日本語の語感としては熟しておらず厳しくて、「お涙頂戴」という言葉がちゃんとある。「感動ポルノ」じゃ、相米慎二の『ラブホテル』のこと?いや、曽根中生の『天使のはらわた 赤い教室』のこと?てな話になってしまうんだけど、知らんのだろうなあ。閑話休題。

■「ホラー」と「テラー」については、むしろ逆のイメージを持っていたけど、違ったのだ。「テラー」ていま日本ではほぼ使わないけどね。『テラー博士の恐怖』が伝わっているくらいか。

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進化論と退化論

■ウェルズの「モロー博士の島」「タイムマシン」など読んで、ダーウィンの進化論たけなわの頃、さすがに逆張りで「退化論」を言い出すとか、捻くれ者にもほどがあるよなあ、なんて思っていたのだけれど、実はウェルズ先生だけではなくて、論壇の一方のトピックになっていたそう。われわれが今進化の頂点にいるとすれば、これからは退化した起こらないのでは?そう悲観的になった人は少なくなかったらしい。「宇宙的悲観論」なんて言説まで出てくる始末。
maricozy.hatenablog.jp
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■これ実は、当時のかなり機微な社会情勢を背景としていて、移民増加による血筋の劣化、女性の権利伸長による家父長制の劣化、出産の劣化、などなどによって、人類が「先祖返り」すると考えられ、それが恐怖の源泉となった。優生思想を思わせる部分があり、倫理的には間違っていて、正しくないけれど、人間はどこまでいっても、原始的な条件反射的な「感情」から完全に自由にはなれないので、どうしても、そう感じてしまう、そう感じる一定層が生じるのは事実としてあるだろう。実際、トランプ大王が席巻する最近の世界では、「先祖返り」が大流行だ。

突然ながら「武侠」とはなに?

■押川春浪の解説で、そもそも「武侠」とは何か?が定義されていて、以下のように格調高い理念だと判明した。単なるクンフー映画の世界観ではないのだ。明治末期に、今もそのまま通用しそうな高邁な理念を掲げて、冒険小説を書いていたのだ。カッコいいね。

「武侠とは、自由、独立、人権の圧制者に向って、あくまで対抗するの精神です。不法なる圧制者を倒して、弱者の権利を擁護するの精神です。いやしくも利欲の為に、他国または他人の権利を侵害せんとするものは、すべて武侠の敵である。」

■つまり、現政権なんて、ストレートに「武侠の敵」だということですね。冒険小説の主人公にぶっ飛ばされるに値する悪であるわけ。まあ、「任侠」とほぼ同じだと思いますが、「任侠」だと何故かアウトローになってしまいますね。というか、そもそも法秩序の発生する前から存在するからだね。

■ところで、「スリラー」て、どうなんですかね?確かに、扇情的な犯罪映画などが想起され、現実的な恐怖を描くとも言われるけど。純粋な怪異現象が起こる怪談は「ホラー」か「テラー」、狂言怪談(あるいは偽装怪談)は「スリラー」と言えそうな気もするけどな。

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