殺人事件を雑に解決!でも演出はシャープで快調な、黒シリーズ第4作『黒の死球』

黒の死球

黒の死球

  • 宇津井健
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基本情報

黒の死球 ★★★
1963 スコープサイズ 83分 @アマプラ
企画:原田光夫 原作:高原弘吉「あるスカウトの死」 脚本:田口耕三 撮影:中川芳久 照明:泉正蔵 美術:山口煕 音楽:奥村一 特殊撮影:築地米三郎 監督:瑞穂春海

感想

■プロ野球のスカウト柏木(宇津井健)は、高校生菊川(倉石功)を獲得するために長野に飛ぶが、世話になった他球団の先輩スカウト浜田(河野秋武)が不審死を遂げたことで、事件の背後を追うことに。。。

■シリーズ第4作で、さすがに黒シリーズのフォーマットが確立している。特にキャメラが中川芳久なので、画面構成がいちいちシャープで決まっている。編集の呼吸も増村組を彷彿させる。このシリーズは、中川芳久の貢献が大きいらしい。そしてこのスタイルはテレビで『ザ・ガードマン』に、そのまま受け継がれる。セットの美術装置も照明も重厚だし、ロケ撮影も技巧的だし、映像面での充実ぶりは圧巻だ。

■正直なところ殺人事件の真相は相当にとってつけで、それどこが面白いの?という話だけど、そこに至る部分でかなり良いところがあって、見ごたえがある。宇津井健と藤由紀子の恋愛関係の描き方も実に上手いもので、すでに別れようとしてるところから人間関係を説き起こして、その理由を記した手紙を小道具として使って、最終的にはその中身は明かされない(読まれない)まま、ラストで破り捨てられる。映画的シナリオの工夫としては上出来だと思う。ただ、浜田の死んだ場所で語り合うナイトシーンのステージ撮影(いわゆる野面)は工夫が足りなくて残念な仕上がり。明らかにロケとの繋がりが悪いし、せっかく風が吹いているのに、効果音くらいは工夫が必要だろう。こういうところは、日活の録音部の方が上手い。

■序盤で記者役の杉田康が絡んできて、宇津井健の過去の経歴(元選手だけど今はスカウトで腐っている)を一方的に早口でまくし立てて説明してしまう作劇処理も定番ながら見事なもので、淀みがない。純粋な説明台詞だけど、演じ方とスピード感で、違和感がない。それでいいのだ。いまいち精彩がなくて冴えない藤由紀子の父親が河野秋武で、演技的にはややブレがある気がするけど、分厚いサングラスの小道具が生きている。さらに、回想場面が積極的に使われるけど、橋本忍的で悪くない。このあたり、シナリオの構築はかなり良いと思う。

■演出も実は悪くなくて、かなりキビキビと引き締まっている。監督の瑞穂春海は古株の人で、名前の通り最終的に故郷で僧侶になったらしいけど、こんなにできる人とは知らなかった。ラストの破られた手紙が風に舞うという定番の見せ場も、実にクールで良かったぞ。『黒の札束』よりずっと良い。事件の真相を明かされて猛烈に取り乱す神山繁のオーバーアクトの場面も、ちょっと面白かった。ただ、映画のクライマックスが温泉宿の一室で、みんなこたつに入っている(?)という窮屈な鄙びた設定なのは、考えものだぞ。普通はもう少し舞台設定を工夫するはずだがなあ。

■ちなみに、キネ旬のデータベースでは音楽が池野成になっているけど、これは間違い。もともとはその予定が、変更になったのだろう。昔の邦画ではよくあることだけど。


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