黒の挑戦者 ★★☆

黒の挑戦者
1964 スコープサイズ ?分(カット版)
KBS京都録画
原作■島田一男 脚本■松浦健郎、石松愛弘
撮影■渡辺公夫 照明■古谷賢次
美術■高橋康一 音楽■浜口庫之助
監督■村山三男


 特に大したストーリーがあるわけではないが、田宮二郎アメリカ的なバタ臭い軽妙さが、なんとも懐かしいほっこりとした風情を醸し出すプログラムピクチャー。黒のシリーズ8作目だが、増村保造が打ち立てた社会派現代劇としてのハードさをすっかり忘れ去って、その場限りの調子よさでお話を転がしてゆく極めてルーズな映画である。しかし、そんなルーズさが却って味になるところが、スター映画の有り難味だ。

 お話は極めて適当だが、キャメラと照明の冴えは特筆もので、映像のルックだけはフィルムノワールコントラストの高いシャープなものだ。しばしば田宮二郎の顔は逆光でつぶれているのだが、もちろんそれはキャメラマンの狙いで、実に決まっている。大映東京撮影所のスタッフが大映京都に乗り込んで撮影したようだが、大映時代劇とはまた異なったライティングが実にカッコいい。カラー映画だが、モノクロのフィルムノワールの作法を念入りに踏襲しているようだ。

 ラストの断崖でのダルダルな銃撃戦など、60年代のアクション映画のあまり賢くない定番演出が堪能でき、精神安定剤としては抜群の効果を持つ。熟睡するぞ。

 浜口庫之助の扇情的なジャズナンバーも抜群で、サントラが欲しくなるぞ。無いけどな。

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