藁が真綿に変わり、水がガソリンに変わる?「理外の理」は実在するのか? 山本一生著『水を石油に変える人』

古今東西、水から石油やガソリンを作れると言い張る詐欺師は何人も登場した、のだそうです。わたしは『世にも不思議な物語』のエピソードで知りましたが、同じような話が日本でも何度かあり、陸軍や海軍に売り込みを図った詐欺師がいた。戦前の話です。しかも帝大工学部教授が本物だと太鼓判を押したもので、軍人さんも騙されそうになる。山本五十六大西瀧治郎もその一角にいた。というか、真正面から詐欺師の獲物にされた。

■実際のところ詐欺に違いないけど、その手口は実はいまだに不明なまま。その気持ち悪さも『世にも不思議な物語』のテイストと同じだ。

■今なら、ビデオ撮影でトリックがわかりそうに思うけど、当時としては相当念入りなトリックを考案したのだろう。でも、そのジャンル、奇術界隈の人に取材すれば、簡単にネタバレする気もするなあ。そこまでやればいいのに。裁判でもトリックの手口は明かされていない。

■水からガソリン事件は、薬瓶のすり替えが行われたと、大西瀧治郎は結論しています。でも、すり替えた本物の薬瓶がどこに消えたのか?物証は得られていない。でも、単純なマジシャン仕事ですよね。

■『世にも不思議な物語』では、1917年にチャールズ・エルトンという人物が国務長官の前に現れて、庭の水栓の水をガソリンに変えて車を運転するし、軍の専門家の前で同様にデモを成功させるが、その時本人は姿を消しているというもの。本書で紹介されているように、1916年にはルイス・アンリッチ事件があり、1917年のジョン・アンドリュース事件では米国海軍が舞台になるから、ドラマはこれらを下敷きに(かなり自由に)脚色したものだろう。(これらの事件は、日本の書籍等では紹介されていないらしい)

■本多維富(これとみ)という謎の人物は人生をかけて錬金術的な詐欺に取り組んだ傑物(?)らしいけど、その精神構造が興味深いなあ。一種の神がかり的な動機があるのかも?そもそも、軍を騙して、どの段階で利益確定してトンズラするつもりだったのか。特許を売るから先に入金してね、と言って着金を確認後、ドロンする気だったのか?天性の詐欺師の精神構造は謎だらけだなあ。

■なお、神託を根拠として当時の名士や経済人たちが大騒ぎした「富士山麓油田事件」というのも凄い顛末で、戦前の日本て、おもしろすぎ。

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