The Siege
1998 スコープサイズ 116分
DVD
■イスラム原理主義のテロが発生したNYに戒厳令が敷かれるが、その裏には軍の陰謀が隠されていた・・・という、同時多発テロを予見したお話が注目された本作をやっと観ることができた。エドワード・ズウィック渾身の一作という骨太作で、CIAのアラブでの失策と軍部の謀略をFBIの捜査官の視点から炙り出すという意欲作。当然のこと米軍の協力は得られず、軍用車などは民間から借りてきたんだと。しかも、CGによるスペクタクル描写はほぼ無くて、こだわりの実写主義で貫かれている。それもそのはず、撮影はなんとロジャー・ディーキンスが担当している。
■FBI捜査官を演じるのがデンゼル・ワシントンで、おなじみの熱演と正義漢ぶりをたっぷりと見せる。首謀者の将軍を演じるブルース・ウィリスとクライマックスで対峙する場面は名場面で、本作のテーマを熱く語りかけて圧巻。ブルース・ウィリスは登場場面は少ないが、おいしい役どころ。デンゼル・ワシントンの熱演を反射することで輝く受けの芝居。デンゼルおなじみの激昂場面が堪能できる。
■CIAの作戦失敗を引き摺るアネット・ベニングの役どころも造形が面白く、複雑な心情を抱えた演じがいのある役柄となっている。テロの首謀者へ肉薄するクライマックスも、私情が絡んで複雑な味わいを残す。
■エドワード・ズウィックという監督、演出的にはあまり上手い監督という印象が無く、本作ももっと上手に撮る監督はいると思うが、終幕にかけて思わぬ高揚を見せて、ベストワークではなかろうか。とにかく、将軍に迫るデンゼルの舌鋒の鋭さに、痺れる。