- アーティスト:宝塚歌劇団
- 発売日: 2008/12/20
- メディア: DVD
江戸切絵 川霧の橋
1990年 宝塚月組公演
原作■山本周五郎 作■柴田侑宏 作曲・編曲■寺田瀧雄 演出■柴田侑宏
出演■剣幸、こだま愛、涼風真世、天海祐希
■大工杉田屋で将来を嘱望された三人の若者たちが、江戸の大火を経て、それぞれの恋愛が数奇な運命に翻弄される様を江戸情緒とメロドラマ性をたっぷり盛って描く宝塚歌劇の秀作。予備知識無しで見たので、まるで山本周五郎のようなお話で、しっかり作ってあるなあと感心していたら、「柳橋物語」の翻案だったようで。そういえば昔読んだなあと思い出した。時代劇らしい美しい台詞が多いのも、山本周五郎ではさもありなん。
■なにしろ90年の収録なので、まだまだ未熟なハイビジョン撮影で、昨今の中継録画の画質とは大違いだ。なんせ23年前の録画だからなあ、としみじみ。
■主人公は剣幸演じる幸次郎だが、その後見人の半次(涼風真世)と清吉(天海祐希)のドラマがいかにも山本周五郎らしい、人生の下積み感溢れる視線で描かれて苦々しい。半次は、大火で生き残ったものの商家の箱入り娘からヨタカに身を落としたお組を慕いながら、労咳による臨終を見送るのみ。
■清吉は若い野心と自堕落から身を持ち崩して、島抜けまでやらかす小悪党に成り下がり、終盤に半次と劇的な関係を結ぶ。このあたりのドロドロした人間模様は時代劇の醍醐味で、大いに堪能した。半次が清吉を亡き者にしてやると決意したところでエピソードを終えるのも凄い。
■ただ、二人の運命の決着を最後まで見たかった気はする。幸次郎とお光の決着と半次、清吉の因縁を同時並行で見せれば陰惨で凄い見せ場になると思うがなあ。
- 作者:周五郎, 山本
- 発売日: 2019/02/28
- メディア: 文庫