息子 ★★★☆

息子 [DVD]
息子
1991 スコープサイズ 121分
DVD
原作■椎名誠 脚本■山田洋次朝間義隆
撮影■高羽哲夫 照明■青木好文
美術■出川三男 音楽■松村禎三
監督■山田洋次

■今になってやっとこの山田洋次の代表作を観たが、なぜか「東京物語」なのだな。そういえば、山田洋次は「東京物語」のリメイクを発表していたが、バブル期(末期)の時代に、敢えて、バブルとはかけ離れた社会の一段面をこうして描き出した山田洋次無縁社会と呼ばれる現代にいかなる「東京物語」を発見するのか、それはそれなりに興味深い。
■物語として特に秀逸とは感じないが、永瀬正敏は非常に良いし、特に和久井映見が勤める工場での長廻しの場面は傑作。ステディカムの使用に積極的な意味がある。
■しかし、永瀬の自然な青っぽさと対照的に、父親の三国連太郎はまだ枯れきっておらず、生臭さを芬々と撒き散らす。長男の嫁の原田美枝子も、和久井映見も、三国連太郎の性欲の餌食になりそうな雰囲気を、山田洋次はどうも積極的に仄めかしている。ほとんど必要性もないのに、原田美枝子に水着を着させて海水浴の場面をビデオで提示するなど、三国の秘めたるマグマに揺さぶりをかけようとするのだ。この映画の裏のテーマは、笠智衆ではなく、貪欲な性欲を隠しようも無い三国連太郎が父親を演じている点にあるのかもしれない。山田洋次はこうして昔から不穏な映画を作ってきたのだ。

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