初恋 ★

初恋
2006 ヴィスタサイズ 114分
DVD
原作■中原みすず　脚本■塙幸成、市川はるみ、鴨川哲郎
撮影■藤澤順一　照明■上田なりゆき
美術■斎藤岩男　音楽■ＣＯＩＬ
VFXプロデューサー■佐藤高典
監督■塙幸成

■これは困った映画で、いったい何が面白いと思ってこの映画を製作したのかが全く理解できない。そもそも、原作自体の成り立ちが、三億円事件の実行犯が書いたという触れ込みの代物らしいので、そういう背景込みで映画を構成しないと、単にできの悪いサスペンス、或いは青春映画としか思えないのだ。
■実際、物語はお粗末の極みで、三億円事件の顛末にも、そこに至る６０年代後半の若者たちの青春群像にも全く感情移入の余地が無く、劇的な構築が全くなっていない。プロの仕事とは思えないレベルだ。おまけに、「暗いところで待ち合わせ」と同じくらい間をたっぷりとる演出のせいで、薄い内容が２時間に亘って展開されるという、退屈を通り越して苦痛な映画になっている。
■その一方でスタッフワークはベテラン揃いというアンバランスな映画で、映像表現としては非常に立派なので、虚しいことこの上ない。役者にも宮崎あおいや小出恵介という実力派の若手を揃えながら、いいところが無く、全く観る値打ちの無い映画だ。