楢山節考 ★★★★

楢山節考
1958 スコープサイズ 98分
BS2録画 
原作■深沢七郎 脚本■木下恵介
撮影■楠田浩之 照明■豊島良三
美術■伊藤憙朔、梅田千代夫 長唄杵屋六左衛門 
監督■木下恵介


 なかなか観る機会の無かった木下惠介の代表作だが、歌舞伎様式の舞台設計、場面転換、照明等が生々しい土俗の世界を民話的な普遍性に転換させることに見事に成功している。こうした試みは内田吐夢も試みているが、なかなか困難なようで、成功例としては中川信夫の「東海道四谷怪談」と双璧ではないだろうか。

 ラストの楢山山中の姨捨の荒れ野も松竹大船撮影所のステージに造営されており、ロケでは表現できない、現世とあの世の狭間に広がる誰も見たことのない静寂の地を的確に表現している。このセット撮影でしか表現できない空間は、「世界大戦争」や「ノストラダムスの大予言」の東宝砧撮影所に造形された核戦争後の世界にも直結しているし、木下惠介の「この子を残して」の原爆投下時の長崎の惨状とも通底しているだろう。

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