嵐が丘 ★★★

WUTHERING HEIGHTS
1992 ヴィスタサイズ 105分
DVD

 ジュリエット・ビノシュレイフ・ファインズの競演で、ロンドンのシェパートンスタジオで撮影された「嵐が丘」。音楽は坂本龍一が担当し、真正面から直球勝負でベタベタのメロドラマ音楽の王道を披露する。ちょっと林光を思い出したぞ。

 キャサリンが死んだのちのヒースクリフの二代にわたる復讐を映画化した点が新機軸らしいが、映画を観る限り蛇足だったような気がする。ヒースクリフの復讐心の執念深さはよくわかるが、劇的な見せ場としては、キャサリンの死で完結して構わないのではないか。

 ジュリエット・ビノシュ演じるキャサリンの人間像が曖昧で、何でも笑ってごまかす単にお気楽なも小娘にしか見えないので、深刻に沈み込むヒースクリフがひたすら気の毒に見えてくるのは計算なのか怪我の功名なのか。

 ヒースクリフを演じるレイフ・ファインズは繊細さと甘いフェロモンを発散しながらも荒々しい野性味を併せ持つ貴重な役者で、イギリス人俳優の美質を凝縮したような逸材だ。ひたすらレイフ・ファインズの美しさのために捧げられた映画である。

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