プロデューサーズ ★★★★

THE PRODUCERS
2006 スコープサイズ 134分
ユナイテッドシネマ大津(SC3) 


 1959年のブロードウェイ、落ち目の舞台プロデューサーは、小心な会計士がショウが失敗したほうが儲かる場合もあるという不思議なカラクリを発見したことから、大コケ確実のミュージカルを作り出資金を丸ごと懐に入れる計画を思いつく。はじめは拒否した会計士は、小さい頃からの夢だったブロードウェイのプロデューサーになるチャンスと思い直し、計画に参画する。二人が発掘した史上最低の台本は、ヒトラーを礼賛するネオナチの若者が書いたものだった・・・

メル・ブルックス監督による映画を2001年にブロードウェイでミュージカル化し、トニー賞史上最多の12部門を獲得した舞台を、ミュージカル・コメディとしてリメイクした本作は、オリジナルの映画よりも出来がいいのではないか。メル・ブルックスの不謹慎なヒトラーネタとオカマネタ、さらに下ネタが炸裂するお下品かつ華麗なミュージカルで、132分の間、不思議な陶酔感を味わうことができる。

 主演のネイサン・レインマシュー・ブロデリックは舞台のオリジナルキャストらしいが、特にマシューについては、ところどころ「フェリスはある朝突然に」の頃とかわらない表情を見せて、芸達者ぶりと飄逸な個性をよく発揮している。特にユマ・サーマンとのダンスの掛け合いは見事な名シーンで、このシーンだけでも映画1本分の値打ちがあるというものだ。

 スウェーデンから出てきたお色気小娘を、なんとユマ・サーマンがゴージャスに演じきり、チープなはずのお色気を豪奢な色香に昇華させている。舞台ではちゃんと間抜けで奇天烈な衣装を身に着けて堂々と踊ってくれるのだから、眼福と言うほか無い。当劇場では「キル・ビル」よりもこちらのユマ・サーマンを断固支持したい。

 ラストに至って裁判の場面で和解させるのはいかにも芸が無く、オリジナルどおりなのかどうかは不明だが、とってつけたような不自然さがある。それまでの狂騒的なギャグの数々を安易に回収しすぎなのだ。その反省があってか、エンドクレジットの後のカーテンコールがいい出来で、メル・ブルックスのファンも満足して帰れるようになっている。

 オカマの演出家とその助手のコンビは、オリジナル舞台と同じ配役らしいが、凄まじい破壊力で中盤をさらってしまう。もし日本版をつくるなら、ロジャー・バートの役は北村一輝しかないだろう。

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