基本情報
それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ ★★★★★
2006 ヴィスタサイズ 50分 @イオンシネマ京都桂川(SC10)
感想
■全国のイオンシネマでリバイバル上映が行われているのを知って、わざわざ出かけました。完全にシアター独占の、一人ぼっちの上映会でしたが、改めて傑作と感じましたね。当然ながら映画版は音響効果が凄いので、重低音が妙にリッチです。映像の陰影も、自宅で観るより精彩で、実に丁寧に作られたアニメだとわかります。実際、陰影の効果とか、ヌルヌル動く動画とか、アクションの特殊効果とか、非常にレベルが高い。完全にこども向けの映画だけど、手抜き無し。そのアニメ表現の丁寧さだけで感動する。
■何のために生まれて、何をして生きるのか?アンパンマンの根本テーマを真正面からストレートに問うた、やなせたかしの真剣味がえげつないけど、見事な脚本だと思ったな。たった50分しかないけど、過不足がない。お馴染みのメンバーは説明がいらないから、これくらいの尺で間に合うのだけど、それにしても、いろいろと秀逸。
■忘れていたのは、ロールパンナちゃんの存在で、人のため生きるのが自分の幸せなんだと、ボクはそれを見つけたんだと語るアンパンマンについて、ドーリイは、そんな人いないでしょ?みんな自分が楽しいことをするために生きてるんでしょ?そんなの偽善者でしょ?と言外に問うけど、「彼は、そうなんだ」と短く応えるところが凄くて、唸った。
■ロールパンナちゃんは、アンパンマン世界では唯一(?)善と悪の心を併せ持った、ある意味人間臭い悲劇のヒロインで、その彼女にそんな台詞を吐かせるところが、作劇の妙。アンパンマンは100%正義の人で、ある意味解脱した人、仏みたいな存在だから、彼にとって偽善の余地はない。でも、善と悪の間で揺れ動く、ロールパンナちゃんは同じ事ができるわけではないのだ。
■だから、自分はそうじゃなくて、自分にはそこまでの無垢な振る舞いはできないけど、「彼は、そうなんだ」と応える。このシーンの、短いやり取りの中で、ありったけの深いニュアンスとテーマ性を描き出した作劇は、素直に凄いと思う。アンパンマンをまわりから照らし出す手法だし、ロールパンナちゃんのキャラ性も端的に描いている。金春智子、すげー
■なぜか、やなせたかしは偽善者に対して敏感で厳しくて、『 それいけ!アンパンマン よみがえれバナナ島』でも、真の善意と偽善の違いを執拗に問うている。戦争前後の体験がそうさせるのだと思う。未就学児童に対して、そこまで容赦なく哲学的な問題を、しかもわかりやすく問うことができる人は、間違いなく偉人だと思う。ウルトラマンだって、仮面ライダーだって、そこまでのテーマ深耕は、なかなかできるのもではない。
maricozy.hatenablog.jp
■そして、クライマックスのカンタータ版「アンパンマンのマーチ」の破壊力だし、活劇魂溢れる作画だ。間違いなく、稀有の傑作だわ、これは。
