基本情報
駆けだし刑事 ★★★☆
1964 スコープサイズ(モノクロ) 83分 @youtube
企画:柳川武夫 原作:藤原審爾 脚本:山田信夫 撮影:藤岡粂信 照明:大西美津男 美術:佐谷晃能 音楽:伊部晴美 監督:前田満州夫
感想
■新米刑事(長門裕之)が、高利貸し殺人事件の捜査で、警察署の近くの花屋の娘(長谷百合)と知り合うが、事件当日、現場の近くにいたと言い出す。。。
■前田満州夫という人はいまやほとんど忘れられた日活の監督だけど、実に筋が良くて、本数は少ないけど、結構重要な演出家だと思う。早くにテレビのプロデューサーに転向したらしいけど、要はリストラだろうね。本作は、何しろ藤原審爾の原作ものだし、山田信夫が脚本を書いているので、実に固い企画で、演出もいいし、演技も良いのだ。
■長門裕之とか伊藤雄之助が良いのは当然として、哀感溢れるヒロインを演じた長谷百合という女優が上出来で、演出にも力点が置かれるし、キャメラも彼女に吸い寄せられていると思う。映画はあまり出てなくて、テレビで売れた人らしいけど、随分逸材だなあ。ビックリした。
■東映のモノクロ作品は、キャメラは常に人物に寄り添って動くのがポリシーなので、人間ばかりを追ってしまう傾向があるけど、日活の場合は、人間が暮らす、活動する周囲の情景ごと切り取るので、映像の情報量が多いし、やはり人間観が異なるのだろう。周囲の環境や生活空間も含めての人間活動だという哲学だろう。これ、ホントに日活映画の伝統的な美点なので、再評価すべきポイント。あまり、誰も指摘しないけど、非常に重要なポイントだ。
■本作でも、ロケもそうだけど、警察署の普請の具合とか、ボロアパートの破れ方とか、大映東京ほどコテコテではないけど、実に念入りで見事な美術。しかも、薄幸のヒロインの昔暮らしていた建物のあたりのロケとか、音響演出とか、実に見事なもので、台詞で語るのではなく、映像や音で語るという映画話術が高度に機能している。ある程度は山田信夫が段取りしたわけだけど、演出の前田満州夫の筋の良さは、誰が観ても明らかだと思うがなあ。
■クライマックスも、東映なら当然活劇に収束するけど、本作はそこが活劇にも台詞にも傾斜しない、静かな作劇と、心理的なサスペンスで押し通したところが凄くて、なかなか並の映画じゃないのだ。ラストの長門と長谷の無言のカットバックで、心理の変化を描くなんて、かなりすごい演出。
■それにしても、長谷百合といいう女優、これだけできる人なのに、なんで、その後のキャリアが無いのだろう。結婚引退かなあ?
