意外にも筋が良いスリラーで感心した『サディスト』

サディスト(字幕版)

サディスト(字幕版)

  • アーチ・ホール・Jr
Amazon

基本情報

THE SADIST ★★★★
1963 ヴィスタサイズ 90分 @アマプラ

感想

■野球見物に出かけた教師三人組は車の故障で立ち寄った修理工場で、指名手配の連続殺人犯に遭遇する。。。

■知る人ぞ知る通好み(単にも物好き?)の有名作だけど、アマプラにありました。しかもアマプラでのタイトルは『Sweet Baby Charlie』となってますよ。他にも『 Profile of Terror』というタイトルもあるらしい。しかもオリジナル・フィルムはジョー・ダンテ保有しているとか。

■ホラーではなく、犯罪実録ジャンルに属するスリラー。後の『地獄の逃避行』でも映画化された、「スタークウェザー=フューゲート事件」をモチーフとしてアレンジしている。脚本と監督のジェームズ・ランディスは、なかなか筋のいい人だったらしい。単なるC級映画かと思いきや、できの良いB級映画で、意外にも映画偏差値は若干高め。

■自動車修理工場の建物の中を探ると、できたての食事がそのまま残っていたりと、異変を徐々に垣間見せる雰囲気描写が丁寧で、その後のサスペンスの段取りも意外に上出来だし、台詞ではなく、映像で見せようとする姿勢は称賛に値する。とにかく低予算なので、白昼の自動車修理工場に舞台を限定して、面倒な照明設置とか不要な簡潔なセッティングでどんどん撮ったはずだけど、なにしろ撮影がヴィルモス・ジグモンドなので、妙にルックが立派。後年の紗のかかったタッチではなく、あくまでシャープなモノクロ撮影で、こうしたジャンルについては、キャメラマンの采配が大きく貢献するから、監督の意図を超えて造形した部分があったのではないか。

■ヒロインのヘレン・ハーヴェイという女優も力演で、正直なところちょっとトウが立っているのだが、このヒロインの変貌がドラマの核になっているところが侮れない部分で、彼女の経験する試練と受難が、映画的に成功しているところがこの映画の最大の美点。序盤からひどい目にあるけど、終盤、殺人鬼の手を逃れたかと思ったら、車で追跡してきて、砂漠を走り回るクライマックスの畳み込むリアリティと彼女の挙動や表情の変貌ぶりは見事なもの。撮影効果も絶品だし、編集もいいし、台詞なしでちゃんと心理アクションになっているから立派だ。殺人鬼が古井戸に落ち込む場面も見事な描写で、妙にリアルだよね。

■「三人の教師が野球見物に向ったが、誰もたどり着くことはできなかった」--そんな不吉な字幕から始まる脚本も秀逸だと思うし、ラストで車載ラジオから流れる野球実況の描写も効果抜群で、よくできた構成だと思う。短い時間の間に、彼らの人生は決定的に、不可逆的に変わってしまったのだ。決定的に、もう昔の自分ではなくなってしまったのだ。それこそがドラマというもの。ジェームズ・ランディスという人は、この一作で消えた(?)人で素性が不明だけど、妙によくできてますよ。

■そして、殺人鬼を演じるアーチ・ホール・Jrという人の、顔芸ね。これは誰もが言及する部分だけど、別にふざけているわけじゃなくて、真面目に役作りした。ちなみにヴィルモス・ジグモンドは彼が起用したらしいぞ。同じ役は『地獄の逃避行』ではマーチン・シーンが演じるけど、確かに似てるよね?


© 1998-2024 まり☆こうじ