70年代は終わっても、わしらの夢は終わらへんで!『宇宙からのメッセージ』

宇宙からのメッセージ ★★★★
1978 ヴィスタサイズ 105分@ぶんぱく

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■京都ヒストリカ国際映画祭の京都フィルムメーカーズラボ連携企画として上映された『宇宙からのメッセージ』。「時代劇が撮れれば、SFも撮れる」(@樋口真嗣)という作例として上映された。そして、これスコープサイズではなく、ヴィスタサイズなのだ!そうだったの?

■フィルムセンターのプリントかと思いきや、どうやら東映で作ったデジタル素材らしく、英語字幕も入るし、プリントのパンチ穴もないし、実にきれいなもの。実際、当時の東映映画の、リッチとはいえない陰影の様子が伺えて興味ぶかい。しかも、終了後に、TVシリーズ放映決定の特報がついていて、これは燃えるよな。実は封切り当時劇場で見ていない(『恐竜・怪鳥の伝説』は観たのに!)ので、これははじめて観た。当然、拍手が起こるわな。
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■今回特に感心したのは、特撮云々ではなくて、作劇と脚本の仕掛けと仕組み。実際、中盤以降ずっと泣けて仕方なかったな。戦争を知らない世代のチンピラの心情が的確に、愉快に描かれるのは松田寛夫の真骨頂だし、世代が上の世代は、ビック・モローにドン・キホーテの役柄を背負わせたのも、実に見事。ベバ2号の台詞で泣かせるのは、完全にスターウォーズを喰っていると思うし、何故か関西弁のチンピラ、ジャックは岡部正純でホントに良かった。川谷拓三だと、正直、年齢が合わないし、濃すぎるよね。特撮云々は措いても、作劇とか主人公の心情とかチャンバラとか、東映の映画作法で自信のある部分は、実際、ジョージ・ルーカスよりずっと良い。深作欣二の活劇演出は、ホントに凄いよ。そこの職人芸が過小評価されていると改めて思う。単にキャメラを振って、短いカットで編集しているわけでは、どうもなさそうなのだ。ここ、誰か実証的に研究してほしい。普通の監督と、何が違うの?

■アロンの恋心の回収とか、リアべの実を発見するくだりとか、もう少し丁寧に描けば良いのに、残念だなあとは思うけど、アロン、シロー、ジャックが姫を売った良心の呵責を悪夢で描く場面などは端的で非常に劇的に効いているので感心した。脚本だけではなく、演出とか編集が明らかに秀逸。押せ押せで息をつかせぬ演出は、やっぱり見事だと思う。

■ビック・モローとベバ2号のくだりは、なんといっても若山弦蔵の説得力が絶大で、なんだかもう、ありがたくなってくる。戦中派世代のこの男の屈折した心情が綺麗に描かれているのも特筆すべきで、衛星軌道上を流れるベバ1号の流星に、彼の心理描写が託されるあたりは、見事なSFだし、松田寛夫の真骨頂かもしれない。地球連合議長の丹波哲郎を放っておいて、「夢が、帰ってきた」の台詞も良いなあ。泣けましたわ。松田寛夫が起用されたのは深作欣二とのコラボ実績もあるし、東映京都時代や特撮もので平山亨の知己があるので、適材適所だと思うし、実際、松田寛夫節全開だと思う。唯一の監督作『バンパイヤ』と、やってることは変らないのだ。
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■しかも、世界中で戦争が進行中の今観ると、実にリアルなテーマを含んでいて、かなり胸が痛い映画なのだ。もちろん、そこは深作欣二の世代的なこだわりなんだけど、太平洋戦争の経験に関する苦い記憶が、濃厚に塗り込められていて、ウクライナがジルーシアに重なって見えるからだね。

トークセッションについて

■上映後に樋口真嗣トークセッションがあって、30分くらいトークがあるんだろうと舐めていたら、約60分の尺があり、膨大なプレゼン資料が用意されていた。さすがオタク監督、ガチですわ。

■ただ、英語通訳が京都フィルムメーカーズラボの若手外国人材向けに入るため、実質的には30分ていどで、もっとじっくり聴きたかったし、質問時間も期待していたのだが、そんな余裕はなかった。そこは残念。若い映画人からどんな質問が出るのか、楽しみだったのに。英語通訳の女性、大変だよなあ。なにしろあのマニアックな内容だもの!終了後にロビーでサイン会が始まっていたのは、ほのぼのでした。

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