基本情報
人間の條件 ★★★☆
1959 スコープサイズ 104分&96分@DVD
原作:五味川純平 脚色:松山善三、小林正樹 撮影:宮島義勇 照明:青松明 美術:平高主計 音楽:木下忠司 監督:小林正樹
感想
第1部
■南満州鉄鋼の生真面目リーマン梶(仲代達矢)は、労務管理に関する改革レポートが左巻きと問題視され、体よく満州僻地の鉱山に夫婦で飛ばされる。約600名の抗日分子が特殊工人として関東軍から下げ渡されると、慰安所込みでその労務管理を命じられるが、脱走事件が発生する。。。
■ずっとむかしに観てますが、仲代達矢追悼&高市総理うっかり(?)失言記念として、再見。二本に別れているけど、実質は3時間(以上あるけど)映画で、分割も全く便宜的なもの。一本の3時間映画として観るのが正解だ。
■面白くて、結構一気に観た記憶はあるけど、確かにこれは力作だし、面白くできている。配役も豪華だし、ロケ撮影も秀逸。満州の広大な大地の一部を実感することができる。鉱山の労務管理というテーマは異様に地味だけど、封切り当時は大規模な炭坑争議が戦われていた時代なので、ヒリヒリする肌感で観ていたのだろう。スター女優の淡島千景や有馬稲子が中国人慰安婦として登場するのだから、当時の意識高い系女優だったのだ。しかも、淡島千景の妙に色っぽいこと。
■中盤で仲代達矢と所長の三島雅夫が交わす会話がテーマを直接語っていて、さすがに秀逸。「檻の中の人間は何を求めると思う?」「自由でしょう」「君は、詩人だねえ!女だよ女。男なら女、女なら男!」とか、「人間とは何なりや。詩でも道徳でもない。吸収と排泄の卑俗な欲望の塊に過ぎない」とか、欲求を70%満たしてやれば、大人しくしてるのだとか、当時の植民地での労務管理のリアルを伝える的確な会話で、痺れる。
■テーマを直接的に台詞で語るのは邪道だとか、スマートではないとか、上等ではないと、一般に映画の教科書的には書かれているけど、こうしたジャンルについては、台詞で的確にうまいこと言ってくれないと、逆に腹落ちしないよね。逃げていると感じるよね。
■それに驚くのは、単純な説明台詞も少ないし、固有名詞の字幕もないしというハイスペックな作りで、みんな原作読んで知ってることは省略するよ!というスタンスか?
第2部
■特殊工人をかばう梶だが、立場の違う双方は容易に分かり会えない。特殊工人の脱走が失敗すると、憲兵隊が7人の処刑を断行する。梶は人間であることの選択を迫られる。
■特殊工人の斬首場面はさすがにソフトな描写だけど、これが数年後なら、噴血描写になったはずだろう。7人のうち、3人が首を斬られ、梶はやっと憲兵に反抗する。その見返りは、招集免除の取り消しで、赤紙を受け取るのだった。残された24時間を、人間らしく過ごそうとする梶夫婦に、有馬稲子演じる中国人慰安婦は「日本鬼子!」と投げかけるのだった。
■かなりテーマ性をストレートに打ち出して、ヒューマニズムを標榜する。ヒューマニズムの立場から、抗日分子の特殊工人たちに寄り添う梶を、良心の呵責が襲い、懊悩する。さらに憲兵はその時代の象徴として、えげつなく物理的、心理的に責め立てる。そのさまは、あまり映画的に上等な描写ではなくて、あくまでわかりやすさ重視。小林正樹の演出も、すでにベテランの粋なのに、なんとなく生硬に見える。まあ、『切腹』でもそうだったけど。それに、キャメラの宮島義勇の意向もあったと想像するけど。
■鉱山の所長の三島雅夫は、おなじみのニュアンスたっぷりな演技が凄くて、普通の台詞なのに、なんでこんなに変なニュアンスが乗ってるの?という芸風だし、憲兵の安部徹は一世一代の悪役演技で、夢に見るレベルで怖い。ステロタイプな描き方だけど、立ち居振る舞いや見た目がすべて完璧なので、文句がない。それに比べると、重要な役の石浜朗が演出、演技的にも不十分で、ここはもっと工夫が欲しい。中盤の重要人物なのに。
■なにしろ、「終」の字幕も出ないで終わるから、もう自信満々ですよ。この地獄はまだ始まったばかりなのだ。
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