恥ずかしながら、大感激!稀有の傑作『地獄の逃避行』

基本情報

Badlands ★★★★☆
1973 ヴィスタサイズ 95分 @BS松竹東急

感想

■1950年代に実際に起った若いカップルによる連続殺人事件をモチーフにした、殺人カップルのロードムービーだけど、これはさすがに伝説的な傑作。というか、カルト作?最近『バッドランズ』というタイトルで公開されたけど、観に行けばよかった。とにかく、撮影と音楽が絶品で、なかなかこんなレベルで化学反応が成功する事例はないよね。サントラ欲しい。

チャーリー・シーン演じる若い男は無軌道にかつ無邪気に殺人を繰り返すけど、全く陰惨さがなくて、警官にさえ、お前ジェームス・ディーンに似てるな!と言われるほど。実際、似ていて、それを狙った配役だし、この配役が大成功。ジャック・ニコルソンでは絶対無理。もっとリアルになってしまうし、単なる異常性格者になってしまう。チャーリー・シーンの虚構性は凄いなあ。舐めてましたが、反省します。こんな役、誰でもできるわけではない。

■どう考えても頭が弱いと思われるヒロインがシシー・スペイセクで、これもなんというか、映画の神様ありがとう!という感じで役にハマっている。とにかくキャメラが絶品なので、当然実物以上に綺麗にキュート撮られている(いや、実物しらんけどね)。その視線には、ちょっと、大林宣彦を思わせるところがあるよね。この映画は当時日本未公開で、後年テレビでひっそり放映されたので、そんな影響はないはずだけど。

■一応、ニューシネマ系統なので、もっと悲劇的なやるせない結末を予想していたけど、リアリティを超越したところまで突き抜けた詩情は、テレンス・マリック、凄いと思うぞ。テレンス・マリックは、なぜか本職が哲学者らしく、頭が良すぎて後年の映画は、いといろと映画作法に疑問もあるけど、監督デビュー作の本作は、間違いなく傑作でいいのでは?偶然の諸条件が寄せ集まって、観たことのない映画を結晶させた、映画史的な事件ということで、公式見解が成り立つと思うぞ!


© 1998-2024 まり☆こうじ