意外にも、お涙頂戴ファンタジーじゃないよ!『君の顔では泣けない』

基本情報

君の顔では泣けない ★★★
2025 ヴィスタサイズ 123分 @TJOY京都
原作:君嶋彼方 脚本:坂下雄一郎 撮影:野口健司 照明:後閑健太 美術装飾:有村謙志 音楽:パク・イニョン 監督:坂下雄一郎

感想

■15歳のときに人格が入れ替わった男女(芳根京子、髙橋海人)の、その後の15年の意識の変化を描く、ファンタジー映画。

■人格は女だけど、身体は男の場合、次々とたくさんの女性と関係を持つが、何か満たされないものを感じ、逆の場合は、女の身体に戸惑いながらも妊娠、出産を経て、このままでいいのではないかと思い始める。その気持ちのすれ違い、対比にテーマ性がある。でも互いに、入れ替わったのが君で良かった、と感じる。設定はファンタジーだけど、ドラマ自体は地に足のついたものになっている。

■一種の思考実験ドラマともいえると思うし、実際、かなり意欲的だと思う。原作では性経験をかなり肉感的に描いているようだけど、映画の場合、そこはさらっと流す。でもそこはもっとみっちり描いたほうが、テーマが伝わる気はするなあ。芳根京子もそれで良いよ、と心の中では思っているはず(事務所が認めないけど)。

■基本的に会話ドラマで、実際のところテレビドラマで見たかったと感じる。テレビドラマのフォーマットの方が向いていると感じたな。なにしろ15年間を描くのだから、ミニシリーズでもいいのでは?

■何故か違和感が拭えないのは、陸(中身はまなみ)が暮らす実家を久々に訪れたまなみ(中身は陸)に対して、母親(片岡礼子)が妙にギスギスしている理由がよくわからないことで、小説ではそんな設定じゃないみたいだけど、あれは何だったの?次々に違う女がやってくるから?まなみ(中身は陸)の実家でもなぜか家族関係がギスギスしてくるし、あれもなんだろう?両者の家族生活の部分がどうもすんなり飲み込めないのは、作劇のまずさか、編集の都合か?それに、まなみ(中身は陸)の旦那が異様に優しすぎて、気持ち悪い。ゆえにご都合主義に見えてしまう。このあたりの人間関係の作り方、描き方に、かなりクセがあると感じた。坂下雄一郎のクセ?

芳根京子はできる子だから、当然だけど、髙橋海人という人のニュアンスが、なかなか異色で、ふだんどんなキャラクターなのか全く知らないので、新鮮な気持ちで観ましたよ。普段の素がわからないので、上手いんだか、もともとこんな感じなのか、判断しかねるけど。個人的には、芳根京子の乱暴な男言葉が聞けただけで、ほぼ満足です。『テレビ報道記者』の男っぽい女性記者、良かったからね。


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