■殺人音波研究の科学者が失踪して、某国の研究所で研究を続行しているらしい。誰が唆したのか?NATOの情報部員が犯人と思しい大使館職員(上野山功一)を心理的にしめげて自白させようとするーというのが主筋。
■キイハンターは変格スパイ活劇なので、そういった趣向になるのだけど、これを怪奇スリラーの道具立てで仮装するところに倒錯的な味があり、高久進の真骨頂がある。その手つきが魔術的で、合理性の点では大幅に無理があるけど、怪奇趣味なケレン味を最優先した作劇だ。当時の石井輝男のエログロ時代劇なみの強引な作劇で、志向が似ていると思う。東映だしね。
■なにしろ上記の主筋に、精神病院の院長(近藤宏)とか、死体置き場に出現する死体泥棒とか、狂った女殺人鬼(夏圭子)とか、死んだのに蘇る怪しい親父(穂積隆信)とか、奇怪な趣向を盛りだくさん。こっちの切り口から展開して、最終的に上記の真相が明らかになる。けど、真犯人を恐怖させるために、拐かした博士にそっくりな死体を病院から調達して、生きているように仮装するとか、見せ場重視の無理くりな展開で、いまどきなかなかありえないよね。当然破綻はしているけど、趣向の面白さで勝っているから、それで良いのだ。
■ほんとにこの怪奇趣向が大成功で、怪奇描写の演出が異様に秀逸なので、佐藤肇かと思ったら、小西通雄だった。後の特撮アクションで有名だけど、先日見た「暗殺教室」も切れが良かったし、なかなか腕のある人だったらしい。なにしろ、女殺人鬼の登場場面だけで天才的で、画面の前景とか、後景で登場人物が気づかない部分に、女の白い手が蜘蛛のように這っているという見せ方は、ちょっと類例を知らない。お話には直接関係ないし、ただ不気味に登場するという指示だと思うけど、誰が思いつたのか?凄い怪奇描写だと思う。
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■おなじみの旧古河庭園でのロケだけど、白昼の庭園に女殺人鬼が佇んでいて、シルエットになっているカットも、当時最先端の表現で、高久進が『回転』のあの感じとか指示したのだろうか?あるいは、撮影の林七郎のセンス?
■当時大流行した狂言幽霊モノだけど、このジャンルて、けっこういろいろ無茶なことができるから、楽しいよね。クルーゾーの『悪魔のような女』て、ヒッチコックよりも影響力大だと思う。
