配役に無理があるので、あまり普遍性は感じられないニューシネマ『ファイブ・イージー・ピーセス』

基本情報

Five Easy Pieces ★★★
1970 ヴィスタサイズ 98分 @DVD

感想

■音楽家一家からドロップ・アウトして、石油採掘現場で働く男(ジャック・ニコルソン)は、父が重病と聞いて、実家に戻ることにする。女(カレン・ブラック)を置いていくのは忍びなくて、一緒に車で実家に向かうが。。。

■ボブ・ラフェルソンといえば『ブラック・ウィドー』の印象しかないけど、1970年の代表作。だけど、これジャック・ニコルソンはミスキャストじゃないか?音楽の才能のある結構な名家の生まれーーには全く見えないからだ。単なる切れやすい性格破綻者にしか見えないのだ。多分、配役が違えば、印象も大幅に変わると思う。それに演技メソッドにもよると思うな。

■肉体労働やってるあたりがハマりすぎていて、ホントに配役のミスだと思う。それでいて、妙に女にはモテるので、行き先ざきで女と関係しまくる。リア充か?そもそもなんで家を出たのか、なんで人間関係を壊してしまうのか、なんで放浪を志向するのか、そのあたりが、明確な理由とかはいらないけど、それなりに腹落ち感が欲しいところ、まったくそれがない。なので、だからそうしたの?ジャック・ニコルソンじゃ仕方ないよね、という感想になる。人間像とかテーマ性に、普遍性が欠けている。切れやすくて、女にだらしない。だから周囲と軋轢を生じる。そりゃ、当然のことで、常識人たるおれたちには関係ないよね。それじゃ、困る。

■車旅の途中でヒッピー風のレズビアンカップルを拾うあたりは妙に面白くて、世界中が汚染されてゴミだらけなので、清浄な地(?)アラスカを目指す二人のうち、ヘレナ・カリアニオテスという女優が秀逸。この人物を通して、主人公の、自分でも気づいていない心情を間接的に描くという趣向(高等テクニック)だろうけど、時代色も濃厚で良いね。

どこにも存在しないところへ行きたい、この世界に身の置き場がない気持ち。それが、この身をさすらいに誘う。それはなんとなくわかるのだけど、ジャック・ニコルソンに仮託されてもピンとこないよなあ。そういうことだと思う。ラストシーンの構築も演出も良いだけに惜しいなあ。うまくいけば、往年のフランス映画みたいな名作になったかも。それに、男を待ち続ける女心を切々と歌う歌で始まったのなら、カレン・ブラックで終わらないと、締まらないよね。


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