参考
■その筋では有名な?というか、超有名作『残穢』をやっと読みました。これは確かに、読み応えのある小説です。さすがにベテラン作家なので、とにかく書きぶりの説得力が卓越している。創作なのかドキュメントなのか、その狭間を狙った戦略を、見事な筆力が裏打ちする。このあたりは、ホラー大賞でデビューしたての作家には真似できないところ。
■とにかく、土地の謂れをめぐって、時代をどんどん遡るところが斬新で、サスペンスを生む。どこまで遡るの?映画を観てるけど、心配になる。ただ、最終的に大きなカタルシスがあるか?といえば、それはなくて、長編小説としてはそこは明らかに弱い。そこをあまり強化すると、昨今ダークファンタジーに陥りがちなので、敢えて避けたのだろうと思う。なので、得体のしれない禍々しい因縁の連なりがそのまま投げ出された格好だ。でも、それって、どこでもありうることでは?
■映画で一番気になったのは「穢れ」概念の取扱いで、さすがに本書では筆者が仏教系大学の出身でもあって、簡単に解説があり、万全ではないけれど、変な地雷を踏まないように配慮されている。「穢れ」は人の内部に蓄積するのではなく、外部に付着するもので、延喜式によれば祓うこともできる目に見えない汚れなのだと。「穢れ」は人に憑いて、血筋を辿って下流に遺伝されるものではなく、場所に溜まり、モノに付着し、人の外側に憑く。それはまさにウイルスに似ている。その拡散の経緯を約100年近く遡って解明する。
■中島晶也の解説で目からウロコが落ちたのだけど、昔の怪談は因果律に則った仏教説話という構造があり、関係ない人には塁が及ばないけど、新しいホラーは「穢れ」が感染するので、誰も無関係ではいられないのだというところ。「リング」「呪怨」あたりから、それが定番になった。パンデミックの恐怖を先取りして感じ取ったのだろうか。

