雑談の霧の中から映画の構想が姿を現す!山田洋次&朝間義隆著『シナリオをつくる』

■テレビの連続ドラマとかはお話が会議で決まるので、かなり様子が違うみたいだけど、基本的に映画のシナリオ執筆は、脚本家がひとりで孤独に行う作業なので、頭の中でどんなやり取りが行われているのかは誰にも見えない。でも、共作ならどうか?シナリオ開発のプロセスが、見える化されるのではないか?という企画で出来上がった本で、かなり珍しい内容。『男はつらいよ 寅次郎の青春』のシナリオ開発過程を録音して、文字起こししたものだ。

■とはいえ、手慣れたシリーズものなので、山田洋次朝間義隆の雑談混じりの会話のなかから徐々に構成が固まってゆく。三幕構成で、葛飾、宮崎、葛飾で非常にシンプル。登場人物ごとのエピソードも基本的に三段階で展開する。なので、凝ったドラマにはならない。始まったと思ったら、もう終わったというエピソード集になる。

■今回は宮崎に主要五人が登場する構成なので、その捌きが難しくて、ベテランの二人なのに、かなり難渋している。散々ぼやきながら、捌いてゆく。そのあたりが非常に興味深い。並行して論点が前後しながら、見せ場の検討が進む。基本は、山田洋次が口建てして、朝間義隆ワープロに打ち込んでゆくのだが、朝間義隆も、そうくるならこう受けるな、とサポートする。

■冒頭の寅次郎の夢の場面も、タイタニックの沈没を再現する趣向だけど、松竹から予算と技術的な問題で再考を求められると、山田洋次がちょっと怒っているのが面白い。できるわけ無いのに、脚本を構想している段階でそれ言われるとカチンとくるものらしい。へー

■映画館で観て面白くない映画も、舞台裏は面白いものー山田洋次がずばりそう言っている。実際、そうだろうと思う。特に失敗した映画の赤裸々なメイキングは絶対に面白いに決まってる。

■ちなみに、映画『タイタニック』の大ヒットのずっと前のはなしで、ゴクミと吉岡秀隆の恋愛劇ですよ。当時流行った、パトリス・ルコントの『髪結いの亭主』にインスパイアされた設定になっている。

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