女たちは生きながら死んでゆく!身を切る傑作短編集だった朱野帰子著『くらやみガールズトーク』(ネタバレあり)

■『現代ホラー小説を知るための100冊』で知った短編集。朱野帰子は『わたし、定時で帰ります』シリーズとか『対岸の家事』などの、ドラマ化もされたお仕事小説で有名な売れっ子小説家だけど、本作は全くタッチが異なる。ひたすら被害妄想的でパラノイア的な女の昏い情念と怨念を追い詰める。それを「被害妄想的」「パラノイア的」と考えてしまうところが、男側の視点というものだけど、でも、小説を読むとちゃんと男でも共感できるから、小説って凄いね。

■結婚、出産、育児、家事・・・これらの人生の営みの中で、女はそのたびに心の一部を確実に殺されてゆくというのが共通テーマ。ホラーは短編に限るというのが個人的な信念だけど、まさにその証左。短編ならではの切り口と、切れ味が味わえる。立派な心理ホラーだと思う。

■”普通”なるものを押し付ける世の中に反抗する「鏡の男」、名前(名字)を奪われることは殺されるのと同義だと訴える「花嫁衣装」、子を身ごもり、育てることは人として死んで獣に生まれ変わることだと知る「獣の夜」、同様に子を生むことは女として死ぬことではないか、子を育てているのは母ではなく、女の幽霊ではないか問う、泣かせる「子育て幽霊」、などなど男の作家に書けない、なかなかの秀作揃いで、非常にユニーク。比較的オーソドックスな心理サスペンスの「藁人形」も良い。

■最終的に「帰り道」で、人生の折々に自分が自分でなくなる恐怖を抱える者が乗るという幽冥バスが登場して、全編の総まとめを行う構成も秀逸で、短編集としての構成も絶妙。某ホラー大賞系統とは、小説としてのレベルが違うのだ。

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