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■なんでこんなシナリオ読んでいるかといえば、なんとなく話題だったフジの『海のはじまり』がまったくピンとこなかったので、生方美久て最初からこんな作風だったのかなあ?と疑問に思ったから。
■バレリーナの夢に挫折して産休教師になった主人公は、夢を「諦める」後ろめたさに苛まれるが、実は知らぬ間に小学校時代の夢を叶えていたことを知ると、「諦める」という言葉の本来の意味を意識する。。。
■というのはお話の一部で、60分のドラマなのに、副主人公が三人も絡む。なので個々のドラマ構成はシンプルだけど、綯い交ぜになっているので、かなり技巧的なシナリオで、普通に読んでおもしろい。『海のはじまり』の掴みどころのない、茫洋とした、のっぺりとした作風とは全く異なる。
■飛鳥はバレーボールを高校で辞めようかと悩むけど、続けて体育教師を目指すことになる。正宗は軽音の女子のギターが超絶だったので、勝手に挫折していたが、入部を決める。百恵は憧れの男子に振られ続けていたが、諦めると、とたんに良いことが。というサブエピソードが並行して進む。
■主人公は彼らと会話することで、というか、主に母親がかなり露骨にご都合主義的に良いアドバイスをくれるので、「諦める」ことは負けじゃないことに気づく。そんなドラマ。
■生方美久は独学でシナリオを学んだ人らしく、確かにシナリオ作法の教科書に忠実だ。「起」の部分で、主要登場人物を全部登場させる。主人公の紹介と設定のためだけに面接の場面が設定される(今のドラマツルギーだとセーフ。個人的にはあまり好きじゃないけど)。モノローグも使う。効率的にセッティングを済ませるための措置だ。そもそも主人公の名前が「舞子」だ(教科書的にはそれでいいのだ)。
■それに、「語るな見せろ」という基本に忠実に、いろんな小道具(いかにもとってつけたようなバナナ!)を投入するし、そもそも踊り場という舞台設定じたいも非常に視覚的でお見事。ミッドポイント付近の書棚の本を入れ替える(バレエからバレーへ!)描写も、まさにそれ。爪先の動作に終始注目するト書きも、同様の視覚的作劇だ。このあたりは、ホントに基本に忠実にコテコテに構築していると思う。
■大きく異なるのは、テーマを言葉で語るなという部分で、教師の物語なので、教室での講話がメインになって、これによって学生たちが変化、変心する。「語るな見せろ」が原理ではあるけど、学校の話であれば、これはむしろ自然な展開ではあり、違和感はない。
■バレリーナの夢を諦めて、人生の踊り場にある主人公は再び、踊りだすのか?というイメージを発想するのが、作家性というもので、凡人には大きな飛躍が必要なところ。さらに、老子を持ち出して、「諦める」という言葉の語源に関する蘊蓄で有無を言わせず、納得に持ち込むのはかなりの力技で、これも、なかなかの芸当。
■というわけで、非常に堪能させるシナリオで、老舗のフジテレビヤングシナリオ大賞、さすがにレベルが高いなあと感心しました。生方氏は相当な技巧派との印象なので、『海のはじまり』のあのもっさりした掴みどころのない作風は、どうもPの村瀬健の嗜好かもしれない。テレビドラマて、Pの意向が大きく働く場合があるから。
■なお、生方美久は坂元裕二の『Mother』を繰り返し観て、シナリオの勉強をしたそうです。実際、完全に血肉化したと思います。
maricozy.hatenablog.jp
参考
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
坂元裕二のエピゴーネンは多いけど、図抜けているのは兵頭るり。先に向田邦子賞を受賞してしまった。
maricozy.hatenablog.jp