日本の夏!幽的の夏!『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2025』

■フジテレビの露骨な穴埋め番組『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2025』を観ましたよ。なんとなく傑作選と言うから、凄いのかな?と見始めて、なんだ平常運転じゃないか、でもスターたちの若い頃のすべすべの姿が観られて、趣深いなあと、結局一気に観てしまいました。

佐藤健主演の「顔の道」(脚本:三宅隆太 演出:鶴田法男)と、石原さとみ主演の「S銅山の女」(脚本:酒巻浩史、演出:鶴田法男)なんて、リメイクじゃないかと思うほど終盤の構成が似ていて、なんで敢えてこんなの選ぶかね?と思ったけどね。でも、両作とも、幽霊の造形が秀逸なので、実はかなり満足度が高い。

■「顔の道」の、首のない巨大な女幽霊というビジュアルは、さすがに唸ったね。要は、ジャンボマックスだろうけど、『アウターリミッツ』などの、グロテスクなエイリアンの表現の影響もあるのでは。しかも、合成ではなく、一発撮りだよね?日本の幽霊、久しぶりに観たけど、やっぱり幽霊、いいよね!

■「S銅山の女」も、お話の筋はなんてことないけど、廃坑のトンネルの中から出現する異形は、見せすぎない照明効果も抜群で、見ごたえがあった。多くは登場せず、一発芸的な顔見せだけど、黒沢清の『スゥィートホーム』の亡霊を思い出したな。石原ひとみの受けの恐怖演技はいまいちだったけど、幽的の表現としては、手応えがある。それで満足。

■単体で良かったのは岡田将生主演の「右肩の女」(脚本:穂科エミ、演出:鶴田法男)というエピソードで、まずはセリフが良い。清水達也とか三宅隆太はいかにも男が書いた典型的な、理詰めで、捻りのないセリフがかわされるけど、穂科エミはある意味脚本術の教科書の基本に忠実に、イキイキしたセリフを書いている。おかげで単なる脇役の窪田正孝が妙にリアルで躍動している。それに、背後霊かと思った女がただの女性客だったとか、パターンを外す捻りも秀逸。

■さらに蓮佛美沙子の配役がなんといっても抜群で、生霊の女の実在感が完璧なものになった。蓮佛美沙子の独特な危うげな存在感、ルックス(目もとの造形と表情)を完璧に生かしたと思う。これは圧巻だった。配役の勝利だし、演出の確かな腕を感じる。

■さらに、新作の「或る訳ありの部屋」(脚本:三宅隆太 演出:森脇智延)もなかなか上出来で、ありふれた顛末だけど主演の出口夏希という女優(はじめて観ました)が、なかなか素性の良いところを示して、見ごたえがある。ついに、シネマカメラ(デジカメだよ)撮影になって、映像のルックスがリッチになったよ。そのソフトタッチがホラーの場合、裏目に出るかと危惧したけど、ちゃんと画調を使い分けて対応している。出口くんは、ちょっと石原さとみぽい気もするけど、もう少し庶民的で、リアルな実在感を出している。まだ座長の貫禄はないけど、なかなか逸材ではないか。

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