基本情報
実録 私設銀座警察 ★★★
1973 スコープサイズ 94分 @DVD
企画:吉田達 脚本:神波史男、松田寛夫 撮影:仲沢半次郎 照明:川崎保之丞 美術:北川弘 音楽:日暮雅信 監督:佐藤純弥
感想
■終戦直後の闇市で、兵隊崩れの男たちが愚連隊となって三国人たちと対峙してゆく。やがて、会社組織として経済やくざ路線を歩む池谷(安藤昇)と、戦前派博徒の宇佐美(葉山良二)が対立し、「銀座警察」と呼ばれた組織の内部崩壊が始まる。。。
■いくらなんでも張っちゃっけ過ぎの迷作。実録路線の開始前から佐藤純弥の映画は狂騒気味で、同時期に京撮の中島貞夫もたいがい狂っていたけど、東映は東西の撮影所で祭り状態だったわけ。岡田茂の、ブルーカラーの原始的な欲求を喚起するエロとグロの刺激追求路線のせいで、そんな社風になっていた物騒な時代。しかも、東大出身のエリート監督が率先して東西で狂っていた、そんな時代。
■お話は非常にシンプルで、笠原和夫の実録路線のような複雑怪奇なわかりにくさはなくて、親切設計。そこは神波史男、松田寛夫の持ち味でもある。しかし、本作の場合は何が言いたいのか、すこしわかりにくいとことがあって、久しぶりに再見すると、はてな?となる。要は、ラストのあたりの愚連隊たちの狂騒で終わってしまう幕切れの、不全感による。
■同時期の佐藤純弥は吉田達Pとのコンビで、露骨に左翼思想に傾倒したナイーブなやくざ映画を連打していて、その露骨な思想性がやくざ映画と変な化学反応を起こしていて、非常に珍味かつ含蓄の深い映画になっていたけど、本作はさすがに神波史男、松田寛夫のアナーキーな個性、というか「悪ノリ」風味が強いと思う。それまでの石松愛弘の書いた冷徹な脚本と大幅にタッチが異なる。
■一方で、渡瀬恒彦が演じたゾンビやくざがいまだに鮮烈かつ斬新な悪夢を示し続けていて、ラストも延々と血反吐をスクリーンに向けて吐き続けてくたばるという前代未聞な演出だし、演じた渡瀬もどうかしている。この頃、心身ともにイケイケの時代だったので、渡瀬は「なんでもやったろうやないけ!」というスタンスで、身体を張り続けていて、実際他の映画では事故も発生していた(労災認定?)。
■一方で驚いたのが、技術的な安定感で、京撮の実録路線が完全に映像の陰影なんてすっ飛ばした雑な仕事していたのに、本作は実にオーソドックスだ。戦後闇市を再現していることからも、意外にも大作仕様だったらしく、美術装置に金かかっているわけはないけど、ちゃんと照明効果で補って、それらしい質感を醸し出している。それが普通なんだけど。撮影の仲沢半次郎は業界では有名な名手で、明らかにできが良い。ロケ撮影も、ちゃんと町並みの情景ともども役者を描く画角とキャメラワークで、ソツがない。深作欣二も『仁義なき戦い』はもともと仲沢キャメラマンでやるつもりだったらしい。当時、佐藤純弥とは名コンビだったけど、実際、京撮の実録ものとは質感が異なる。驚くべきことに、この時期、東西の技術レベルが逆転しているのだ!
■いつも散々な目にあうM体質の内田朝雄がとうとう豚のエサにされたり、梅宮辰夫が「キンタマ野郎」だったり、いろいろと伝説が多い映画だけど、佐藤純弥なら、この前後の作品のほうができは良いと思う。左翼教条主義的だとの批判ももっともではあるけど、でも映画として確実に面白いからなあ。
