路地に生まれ、路地に死んだ兄弟『唐獅子警察』

基本情報

唐獅子警察 ★★★
1974 スコープサイズ 90分 @DVD
企画:日下部五朗、松平乗道、田岡満 原作:かわぐちかいじ滝沢解 脚本:野上龍雄 撮影:赤塚滋 照明:北口光三郎 美術:鈴木孝俊 音楽:広瀬健次郎 監督:中島貞夫

感想

舞鶴の漁村で育った腹違いの兄弟。兄(小林旭)は故郷を捨てて東京でやくざ社長に成長し、故郷で母親を看取って貧乏くじを引いていた弟(渡瀬恒彦)も兄に反発して東京で一旗揚げるために愚連隊を組織するが、大阪の大組織(安藤昇)の傘下に入ったため、鋭く対立する。。。

■漫画の映画化のはずが、なぜか野上龍雄が全く別な話を書いてしまったという謎企画。もちろん、Pが許したわけだけど、当時波紋を呼んだそう。野上龍雄の構想としては、被差別部落のスラムの中で疎外されて育った兄弟がやくざになって、最後まで捨てた故郷の人々に唾棄されながら無惨に死んでゆくという絶望的な悲劇だったようだ。最終的には、舞鶴の吉原地区を舞台として、入り組んだ狭い路地を活かしたロケ撮影を行った。路地は、中上健次の「路地」ですな。このあたりは、中島貞夫のマイノリティ嗜好が野上龍雄に反響している気がする。

小林旭渡瀬恒彦の兄妹の相克が劇的な見せ場で、そこは実際見応えがある。イケイケ時代の渡瀬恒彦が怖いもの知らずに突っ走ると、小林旭が渋く受け止める。その芝居の成否に賭けて、中島貞夫は、あまり映像的な処理には頼らない方針を掲げたようだ。二人の芝居をじっくりと観察する、そういった演出姿勢だったようだ。実際、中島貞夫は大学で演劇やってた人なので、演技にはこだわりがあるらしく、映像の見栄えよりも、役者の演技の方に力点を置くタイプの監督だったようだ。

■実際のところ、大組織に反逆して行き場を失った兄弟が最終的に雌雄を決するところまでの展開は良いと思うけど、ラストの漁師町での活劇はいまいちと思う。舞鶴の吉原地区は今では東洋のベネチアとまで言われる(自己申告?)、情趣に富んだ町並みなので、もっと構図的に構えて大きく見せたほうがよかったかも。こうした部分は、伝統的に日活映画が非常に上手くて、東映の下手なところ。日活映画なら、特にモノクロ撮影で、見事に町並みと人間を等価に引き立てて撮ってしまうはず。それに、もともと狙っていたのはもっといかにもスラム的な、絶望的なカオスな情景ではなかったか?例えば、以下の記録映画『スラム』で記録された都市スラムのような情景。そんなところで活劇を撮りたいと思うのは、当然だけど、さすがに難しかろう。
maricozy.hatenablog.jp

■さらに残念なのは漁師町のモブたちの演技で、北村英三が代表として振る舞うけど、さすがに見せ方の工夫が物足りない。非常に重要な要素なので、もっと丁寧に撮るべきだし、もっと良くなるはず。尺が足りなくなるだろうけど、短くても象徴的なものをぶち込むべきだったかも。住民のセリフだけではなくて、シナリオ作法のいわゆる「シャレード」なんか使って、映像で的確に見せればよかったのではないか。まあ、東映ドラマツルギーではないだろうが。

広瀬健次郎の劇伴がイケイケで大変結構です。TV版『日本沈没』の短いスコアも流用されます。特にチンピラたちの大暴れを無責任に(?)煽る楽曲は、以下のCDでも高音質で聴けまして、ウキウキしますね。



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